K

バケモノの子のKのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
3.0
もう細田守は遠くへは行けなくなったんだな、と思った。アニメ映画を観るときってアニメ映画でしか成し得ない長旅がしたくて観るんだけど、今作は小旅行か、さもなくば休日の軽い遠出のような規模の移動にしか思えなかった。もはや時かけやサマウォのようなタイムレスな体験を彼に期待することはできないらしい。オープニングで個人的にめちゃくちゃ嫌いなG.K.氏の名前が出てきたところで悪い予感はしたし、案の定あの人の好きそうな質感が随所にあったように思うが、これはただの過剰反応かもしれないのでとりあえず良しとする。渋谷とバケモノの世界の距離感というか、蓮が気軽に行き来しているあの感じは新鮮でなかなか良かった。見ようによっては設定が甘くてその辺りの仕組みについて適当に誤魔化しているだけのようにも思えるが、なんとなく新しい時代のファンタジーという趣も無いこともない。マニック・ピクシー・ドリーム・ガール的ではあるものの、楓の魅力も物語に見事な彩を添えていたし、全体として悪くはない映画だとは思う。もう一度観たいとは思わないが。
K

K