つぐみ

怒りのつぐみのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.6
原作厨なのでどうしても初回は「あのエピソード削られてるな」「ここ再現できたのすごいな」とか確認作業になってしまって、それは正しい映画の見方ではないんだけど、皆さんのスコアが押し並べて高いので、ああ映画としても成立してるんだねと安心したり。

ただやっぱり上下巻の小説を2時間20分でまとめるのは駆け足になるから、心理描写の掘り下げ方とかは不十分で(優馬は何であんなお母さん想いなの?とか、それぞれの容疑者を疑い始めるまでが性急じゃない?とかね)、それが映画だけを見てる人に伝わるのかな〜と懐疑的にはなった。
とはいえ、そこを埋め合わせるだけのパワーと編集・舞台美術などスタッフの力量、あと脇役の手堅さがあった。

本作一番肝心(?)の濡れ場は優馬がコンドームの袋を口で千切った瞬間、こっちのテンションもブチ上げで(「怒り」発生可能上映があったらあそこは「ヒュー!!」って言うとこやで!)、やられっ放しの直人が事後に「腹減った」と漏らすのが緊張を解くいいシーンだった。
またそのときの優馬もいい顔なんだ…
だったら原作にある「コンドーム買っといてくれたんだ、ありがとう」も言えよな???さっきからコンドームコンドームうるせえぞ私!!!!

そのあとも優馬が直人の耳と首にキスするシーンがエロすぎて瞳孔が開きっ放しでした。

今回ゲイ役を演じるにあたって「ブロークバック・マウンテン」を意識したとのことなんだけど、優馬と直人は完全にイニスとジャックなんだよね。
直人のカーディガンを捨てるときに躊躇うのも、イニスは最後にジャックがのこしたシャツを抱きしめることを織り込み済みだと思うし、最初のセックスは合意の上じゃないのにその後はお互いラブラブっていうのが完全にトレースですやん!!
(発展場のローションブシュブシュだって、ブロークバックの自分のつば潤滑油にするとこの対だろ〜??)

与太話はさておき、エース級の俳優ばかりで絵がうるさくなってしまいそうなところに、佐久本宝くんという新星がものすごい箸休めというか、一番のリアリティをもたらしたのがすごいなと。李監督は慧眼。
男子高校生の、まだまだ「足らない」感じってたぶん演技すればするほど嘘くさくなってしまうから、この子が「自分でも何言ってるのか分からない」みたいに戸惑ってる様子は、多分もう次の作品以降は見れない、その時々の奇跡みたいなもんなんだろうなと貴重に感じました。
たとえば菅田将暉くんがやったら説明しすぎになっちゃうんだよ、色々。

な〜んか、まだまだ語りたくなってしまうんだけど、冒頭の愛子がヘルスで目元を震わせながら「とうちゃん」って呼びかけるだけで泣きそうになってしまったので、十分満足でありました。

「怒り」というタイトルの意味は正直ワカンネ。
つぐみ

つぐみ