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怒りのzunzunのネタバレレビュー・内容・結末

怒り(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

直接的には関わらない登場人物たちが、残虐な一家殺人事件を通して、怒りや悲しみや絶望といった感情でリンクする。疑われる者、信じたいが疑ってしまう者、信じ裏切られる者、そんな人たちの群像劇。

本作を観て強く連想したのが、橋口監督『恋人たち』。やり場のない感情って所では『恋人たち』での妻を通り魔に殺され夫の感情と、『怒り』での広瀬すず演じる泉の抱く感情に同じものを感じた。
また『恋人たち』では大切な人に信じて貰えなかった側の悲しみが描かれるのに対し、ミステリー仕立ての『怒り』では信じられなかった側の視点に重きを置き、懺悔や後悔が描かれる。

『怒り』の最大の見所は豪華な役者陣の圧巻の演技。重厚でずっしりと来ます。
また、巧みな編集も相まって、停滞する所がなく、141分の上映時間に長さを全く感じない。

お話的にはミスリード誘いながら、3つのドラマが同時進行する。皆んなに幸せになってもらいたいと願いながらも、誰が貧乏くじを引くのか的な感覚にハラハラする。
だが、犯人が分かった瞬間に、この作品の欠陥や矛盾が一気に露呈してしまったような気がした。

お話を盛り上げる為のミスリードなのは重々承知しているが、警察は全く活躍せず、むしろ事件を混乱させているだけに思える。
また、話の風呂敷を広げた割に…"あれはなんだったの?"って感じてしまう部分が多い。そして何より犯人像があれって…原作は読んでいないので何とも言えないが、重厚なドラマだっただけに残念に感じた。

でも、役者陣の演技は素晴らしく、それだけで十分映画代は回収できる出来栄えの作品だと思う。
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