明石です

杉原千畝の明石ですのレビュー・感想・評価

杉原千畝(2015年製作の映画)
5.0
第二次世界大戦中のヨーロッパで、外交官としての自身の地位を投げうって、ユダヤ人を日本に亡命させるべくビザを書きまくり、数千人の命を救った偉大なる男の実話。「僕が大量に不正のビザを書いてることを日本政府が知るころには、大使館はもうここにはないさ」格好良すぎる、、世界一男気のある詐欺だよ笑。

田舎から上京して早稲田大学に通うも学費が払えず中退、公費で通える満州の大学に転入すべく語学を極め、外交官へ。しかしロシア行きのビザが手に入らずリトアニアに勤めることに。数千枚のビザを発給するまでは、(小国の大使館という肩書だけを頼りに)わりと普通の人だと思ってた(ごめんね)から、これほど野心家で努力家のエリートだったことを知り驚く。

また、考えてもみれば当然なのかもですが、ユダヤ人を救うために大量のビザを不正発給したことで、日本政府に睨まれるだけでなく、ソ連やドイツのゲシュタポにも命を狙われていたとは、、そしてドイツ人やポーランド人の部下に助けられ、九死に一生を得ていたなど、マル秘エピソードが盛りたくさん。杉原千畝の偉業はひとりで成し得たのではなく、彼が国内外で培った誠実な人脈があってこそ成し得たことなのだなと。

作風自体も安易な感動ものに流れず、ホロコーストはもちろん、ソ連に占領されたリトアニア国民が受けた非人道的な仕打ちなど、長年歴史に埋もれていた過酷な現実をきっちり描く誠実さに作り手の心意気を見た。主人公が左遷された先(ルーマニア)の大使館で催されるダンスパーティのさなか、太平洋戦争の悲惨な戦況のモンタージュが重なるシーンは圧巻でした。戦前の時代の日本人にはまだあった、世界に対して自信に満ち溢れてる雰囲気、いいですねえ。昔はこれが日本人なのだと思ってたなあ。子供の頃父親によく戦争映画を観に連れて行ってもらってたのを思い出す。

なお21世紀現在、杉原千畝の英雄的愚行によって命を救われたユダヤ人の子孫が世界中に4万人ほどいるそうで、そのためにイスラエルは親日国家なのだそう。ラストの主人公の台詞、「私はまだ世界を変えたいと思っていますよ」、本当に偉大な男の物語でした、、
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