EditingTellUs

グローリー/明日への行進のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

グローリー/明日への行進(2014年製作の映画)
3.7
本日の作品は、アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者として活動した、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとその活動について描いた作品をご紹介します。

時代も時代、ようやく人種間の問題や男女間の問題などが、映画界でも話題になるようになってきたここ最近。このように、これまでにその問題にぶつかり、戦ってきた人を描く作品は、これまでもまたこれからもどんどん増えていくでしょう。

我々日本人は、このような世界的なテーマに触れるのが遅い習慣がありますが、オリンピックなどの関係もあり、私たちがこのようなテーマを目にする機会も増えることは間違いないです。

そこで、今作を通してみていくのは、黒人のキャストを映す撮影方法です。

撮影監督が最も重要視する要素として、スキントーンというものがあります。いわゆる肌の色で、この肌の色をどう引き出すのか、またどう隠すのかを工夫することで、そのキャラクターの人間味を視覚的に表現することができるからです。

我々は日常的に生活していて、周りの環境に準じて視覚要素を調整しているので、あまり気にすることはありませんが、照明によって、またカメラのセッティングによってスキントーンは大きく変化しますし、それによってキャラクターにも大きく変化が出てしまうということです。

今作では、主要なキャラクターがアフリカ系アメリカ人で、黒人の方が多かったですね。撮影のテクニックとして、白人の人の照明、黒人の人の照明、アジア人の照明、中東の人の照明、というステレオタイプというのは昔からあります。それは髪の色なんかでもそれぞれ異なったものがありますね。

今作の特徴としては、ストーリーの主軸として、壁に立ち向かう人々の強い意志、というものがあり、それを撮影で表現するということに大きく挑戦していました。

特に印象的だったのは、輪郭を型どるハイライト。

キャラクターの顔全体を照らすのではなく、半分だけ、時には1割だけハードライトで照らすことで、くっきりとした輪郭が浮き上がり、さらには光が当たってない部分はディテールの全くないシャドーが支配します。
これは、黒人の人のスキントーンの特徴を利用し、心に宿る力強さだったり、人と人との絆の強さだったりを、潜在的に感じ取らせるような照明です。
特に室内のシーンは極力シンプルなキーライトだけにするなど、シンプルだからこそなせる真っ直ぐさを画面から見て取ることができます。

このように、撮影監督は大きな枠組みから、小さなディテールまで挑戦を繰り返す生き物です。笑

毎回の作品で新しい撮影監督に出会えること、また別の作品でさらなる躍進や挑戦を大きな画面で見れる事だけでも、映画を映画館で見る楽しさにつながりますよね。
EditingTellUs

EditingTellUs