Yoshishun

母と暮せばのYoshishunのレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
4.1
「父と暮せば」をベースに山田洋次監督が脚本も担当した意欲作。息子が原爆で亡くなってから3年、突然母の前に幽霊となった息子が現れる。主演は吉永小百合。

序盤から10分足らず、原爆の恐怖をかつてない程味わうことになる。限られた製作費の中で作られた原爆のシーンは非常にシンプルかつ完璧。敢えて投下直後のシーンを見せないのも珍しいが、本作の舞台はあくまでも長崎のあの日から3年後であることを強調してるかのよう。

全編通して見ると、室内、もしくは母の家という1つの舞台だけでストーリーが展開されている。これは「父と暮せば」と同じ構成だが、撮影や演技を見てると自然体かつ映画らしい映画となっている。「父と暮らば」は映画というより舞台を観てるような感覚だったので、本作は主演二人の単なる会話劇に終わらなかったのが良かったと思う。そして、無駄がなく、重要人物の一人を演じた黒木華の演技は素晴らしい。二宮の演技は日アカを受賞する程のものではないように感じたが、愛する人に苦悩する町子さんを熱演した黒木華は本当に素晴らしいと思った。また、今や日本の母親を演じさせたら右に出る者はいない吉永小百合も良い味を出している。

また、戦争反対!や戦争は駄目だ!と露骨に表現していないことに非常に好感が持てる。戦争によって失われた命は失われたままで、大事なのは今を生きることだとストレートに訴えかけてくる。

しかし、二宮和也の不自然な喋り方は終始慣れなかった。やっぱり「僕」とか「~んて」とか「どぎゃん」とか、所々アクセントがおかしかったり、凄く演技が上手いわけではなく、主演男優賞は過大評価のように思えた。

賛否両論の結末に関しては別に悪いとは思わなかったが、急に過剰なファンタジー演出が出てくるとかなり不自然のように思えた。

色々過大評価のように思えたが、低予算でここまでのものを描いた山田洋次監督は凄いの一言。戦争を扱ったホームドラマだが、メッセージ性は非常に強いし、これが今作られたことの意味は理解できるはず。

ちなみに、本作が初めて鑑賞した山田洋次監督作品。
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