けーはち

恋人たちのけーはちのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.6
「恋人」は現代語では相思相愛の相手だが古くは片想いも含む言葉(英題: Three Stories of LoveでLoversではない)。妻を殺された土木作業員、不倫するパートの主婦、親友に恋するゲイの弁護士と、3人の報われない3つの変わり種恋愛群像劇。2015年の映画として2020年五輪招致に向けた空騒ぎが始まり、水素水(をイメージした美容水に劇中ではなっている)の怪しいマルチ商法が流行っている世相で、妻が殺害され民事訴訟で首が回らず行き詰まった状況で自殺しようにも度胸がなくカミソリでサッサッと軽く腕を撫でるだけの男性、中年になっても小説や漫画を書いて理想の王子様に憧れる乙女のような女性、近くに居ながら気持ちを打ち明けられない大好きな親友の頭の影をなぞるゲイ……虚しさや悲しさの中にフッと失笑するような諧謔を散りばめながら、悲惨な絶望の中でも営々と続く明日を生きよう、取り敢えず前に進もうとする人生の一端を切り取るような生々しい筆致に魅せられる。