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仁義なき戦いのぱのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
5.0
単刀直入にこれはやばい。
めちゃくちゃ面白い。今まで見た映画の中でもトップクラスに好きだった。
1960年代までの任侠映画が英雄的な死や親分子分のつながりを描いていたらしい一方でこの作品ではそんなものはない。親分子分のつながりなんてのは「利益」の前では米粒よりも小さいし軽い、そして死も当たり前にあるし突然くる。簡単に死ぬ。

ただシリアスなだけじゃなくところどころ滑稽さもある。例えば最初の方にある指を詰めるシーン。加えて、暴力団組員とはいえ人殺しには慣れていないところがかなり良い。広能が土居組長殺す際のやり方は全然スマートじゃない。だが鬼気迫るものがある。これが良かった。

作品通して、自身の利益のみを重視し、それにおいては子分のことなど全く顧みない最悪な親分の山守と任侠道を守る広能との対比が見事だった。組が大きくなると同時にもともとは同じ方向を向いていた面々が別の方向を向き、内ゲバが発生。どんどん人が死んでいく。そのなかでも唯一生き残ったまともな広能。広能にとって組の内部抗争は悲劇に映ったに違いない。最後の坂井の葬式を訪れるシーンはやり場のない怒りをぶつけるものだったと思う。ただ広能は「真面目な極道」であったからこそ、元親である山守を殺さなかった、あるいは殺せなかったのではないか。そこがまた良い。

簡単にあそこで山守、槇原、大久保らを殺害していたら作品がチープな復讐劇に成り下がってしまっていたであろう。
ぱ