がちゃん

サーカスのがちゃんのレビュー・感想・評価

サーカス(1928年製作の映画)
4.0
チャップリンらが設立した、「ユナイテッド・アーティスツ」で『黄金狂時代』に続いて自ら主演・監督・脚本作品として発表した本作。

この作品の制作時には、チャップリン自身の私生活トラブルや、セットの崩壊などで、完成までは大層苦労したらしく、また、他のチャップリン作品ほどの批評家の評価も高くなかったという。

今回、制作から100年近くなってからの鑑賞となったわけですけれども、いやいやどうして、実に可笑しくてペーソスもあるいい作品でした。

スリ騒動に巻き込まれたチャップリンが、サーカス小屋に飛び込んで、本人の意に反してそのアクロバティックでおかしな動きで観客の大喝采を受ける。

そのサーカス団には、団長である義父から酷い仕打ちを受けている空中ブランコ乗りの少女がいて、チャップリンはたちまち彼女に恋をする。

チャップリンは、団長に、少女に対する仕打ちを辞めさせることを条件に、正式にサーカス団に入団する。

少女に熱を上げるチャップリンだったが、実は少女は、スリムでカッコいい綱渡りの芸をする青年に恋をして・・・

チャップリンのパントマイムの芸が至高であるということを改めて感じ入る本作。
開巻の、子供が持っているお菓子を抱いている親の目をうまくごまかしながら盗み食いする場面からゴキゲンになれる。

警察に追われたチャップリンが、鏡迷路に飛び込んで大混乱になる場面があるのですが、これはそのまま、「燃えよドラゴン」(1973)のクライマックスシーンを連想した。

常に誰かに追われるチャップリンが、ライオン小屋に飛び込んでしまうシーンや、ウィリアム・テルの練習するところなども傑作シーンですが、なんといってもクライマックスは、スタントを使わず自ら演じたという、空前絶後といってもいいだろう「猿」と一緒に綱渡りをするシーン。
相当なバランス感覚と運動神経がないとこなせない芸で彼は笑いを取る。

チャップリンの身体を張った芸に観客も拍手喝采、サーカスも大好評のうちに千秋楽を迎えるのですが、このあとにちょっぴり苦いエンディングを迎えることになる。

山田洋二監督の「男はつらいよ」シリーズや、鈴木則文の「トラック野郎」シリーズは、このシーンの焼き直しなんじゃないかと思うほど、本作のパターンは踏襲されている。

砂ぼこりの舞う中、独特の歩き方でトボトボと画面の奥に去っていく彼の背中は、まさに「哀愁」という言葉が似合います。
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