ペジオ

ザ・トライブのペジオのレビュー・感想・評価

ザ・トライブ(2014年製作の映画)
4.1
御覧ください 彼らは五月蝿いくらいに愛を伝えようとしています

まず良かったのは「感動ポルノ」的に障がい者を描いてはいなかった点なのだが、これは監督の主義や良識からというよりは必然的にそうなった様にも思う
世の中のほとんどの人は「手話」を扱えない故に、感覚や「言語」を共有する聾唖者のコミュニティが「閉鎖的」なものになるのは当然なのかもしれない
映画を観て、言葉を繰り出す手の動きが大きくてやたら速い事に改めて驚いたのだが、それは彼らにとっての手話が、私たちが意思や感情をその微妙なニュアンスまで含めて「口から出る音」でやり取りするのに代わるものだから
だから何とか伝えようとして自然と身体(「表情」…「顔面の筋肉の躍動」含め)は感情の赴くまま過剰に動いてしまうだろうし、その結果所謂「口で言ってもわかんねえ奴には…」という「暴力」に至るまでの道のりが私たちよりも短くなって「しまう」のではなかろうか?(自分でも偏見でものを言ってるなあとは思うが…。)
…一般的な聾唖者がではなく、あくまで「この映画の彼ら」は普通よりも感情的で…どこか僕らと違う「部族」の様な「野蛮さ」すら漂っていたと思う(僕が「アポカリプト」に求めていたのはこの感じだったかもしれない。)
「台詞」を廃した作り故に、ストーリーよりも彼らの「世界観」の方が強く印象に残った(ワンシーンワンカットの長回しのお陰でそれをじっくりと捉える事ができた。)

童貞感溢れる主人公の物語の結末が、「思いが伝わらない」という事実が反映されたものであったのは普遍的でもあった
喋れる僕らにもああいう事は普通に起こりうる

カツアゲのシーンやトラックに轢かれるシーンがコントみたいだったのはちょっと笑った
同時に、ああいう「動き」の笑いの分かりやすさは、どんな壁も超えられるだろうとも思った
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