イチロヲ

昭和おんなみち 裸性門のイチロヲのレビュー・感想・評価

昭和おんなみち 裸性門(1973年製作の映画)
3.5
元遊女の恋人(梢ひとみ)を候爵(長弘)に捧げた書生(江角英明)が、候爵の種により産み落とされた娘(梢ひとみ・一人二役)と十九年越しの対面を果たす。大正期と昭和初期を舞台に、娼婦性の連鎖を作った男の葛藤を描いている、日活ロマンポルノ。

生まれながらの不幸により、母から淫売の血を引き継いでいる娘が、鬱屈した精神を性衝動に転換させながら底辺へと落ちていく。大和屋竺のケレンミは後退しているが、「リベンジもの」としては一定水準の面白さ。

複雑な構造のドラマを、曽根中生の観念的な演出で、70分の尺に圧縮させている。台詞ひとつ聞き逃せない鑑賞を強いられるが、和洋折衷を再現している雰囲気作りにより、グイグイと牽引させられる感覚が心地よい。

演出面では、カミソリで首を切ったときの、景気よく迸る鮮血表現が最高。ラストの銃撃シーンでは、銃口から火が出ずに困っている役者を見ることができる。また、濡れ場での大仰なマスク処理に、ロマンポルノ裁判を背景にした時代性が見受けられる。
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