Chico

はじまりへの旅のChicoのネタバレレビュー・内容・結末

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

数々の賞を取っていて、とても評価が高い作品です。wikiによると、ガーディアン誌のみが否定的。前から気になっていたがスルーしていたのを、filmarksでも好評なので鑑賞することにしました。
鑑賞の結果、自身もガーディアンと同じく否定的な反応となりました。🙀

始まっていきなり感情が置いてきぼりになってそのままラストまで行ってしまった感じです。途中挫折しそうになりながらもなんとか観ました。

初めのほうで母親が自殺し、家族が嘆き悲しみその喪失を抱え、お葬式に行くため(キリスト教式の葬儀を阻止する任務のため)に旅に出るわけです。母親を亡くすのは悲しい出来事ですが、子供達が狂ったように「ママ、ママ」と連呼するほどの人物、ましてや父親が逮捕されるかもしれないというリスクを犯してまで会いに行こうと思う母親の人物像がほとんど描写されておらず子供たちとのエピソードも特段なく、彼女がどれだけ素晴らしい人なのかが伝わってこなかった。母親の存在がラストまでとても重要なので、そこに乗れないと最後まで乗れないのかもしれない。

だけど一番ひっかかったのはエンディング。
アメリカの現代社会を、具体的な例をふんだんに使って(肥満、消費、人権等々)痛烈に批判しているけど父親のやったことが棚上げされてる。(劇中では児童虐待で父親は責められる)
子供に与えた今後の影響についての示唆がおろそかになっていると感じた。極端に偏った教育(反社会的な思想)が子供の今後の人生に与える影響、もしかしたら人生をとても生きづらくするかもしれない、場合によっては滅ぼしてしまうかもしれない、ということへの示唆が欠如している(監督の配慮が見えない)。あんなハードな生活を何年も続けてきたにもかかわらず(劇中の描写も長いです)、ラスト数分で普通の生活に戻り、スクールバスがくるよ、とやわらかい朝の光に包まれてダイニングで朝食を食べてる図は違和感しかない。
※父親の教育にこんなにひっかかりを感じるのは、イデオロギーをもった両親に育てられた自身の経験が原因かもしれません。今となってはそれが良いのか悪いのかはわかりませんがかなり長い間抜け出せなかったのがトラウマです。

気になったので調べたのですが、アメリカの児童虐待の状況はそれが認められたケースだけでも人口比で日本の約9倍の68万人と(厚生労働省の資料(2014年)による)圧倒的に多く、深刻な問題と見て取れます。現代社会を描写するのであればそれも踏まえて、親子それぞれの感情をもう少し丁寧に描いて欲しかったと思いました。
Chico

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