七沖

はじまりへの旅の七沖のレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.7
トンデモ家族がドタバタするストーリーかと思ったら(そういうシーンも多いが)、家族の普遍的な幸せについて描かれた作品だった。

主人公・ベンとその子供たちは世俗から離れた大自然の中で暮らし、ベンの教育によって子供たちは逞ましく教養豊かに育っていた。そんなある日、亡くなった妻の葬儀に出るために一家は一般社会に出掛けていき…というストーリー。

普通、子供から訊かれたら答えを濁してしまいそうな「セックスってなに?」などの質問に、ベンは正確な事実だけを答えていく。子供がワインを飲んでみたいと言ったら、「フランスでは16歳から飲酒できる」と飲ませてやったりする。
子供が興味を示したことに対して正直に教えることは間違ってはいないのだが、一般的な家族からみたらオカシイと感じることもある。なにが「普通」かは人によって異なるし、育った家庭環境に左右される。
たとえば、目玉焼きにはソースか醤油かでも、人によって「普通」は異なると思う。
この映画のテーマは、キャッチコピーにもある通り、「普通ってなんですか?」…これに尽きる。

ベンの子供たちは一般社会に触れ、自分は普通じゃないかもしれないと不安を感じたり、今まで経験したことがない恋愛感情を知って戸惑い、彼らの「普通」が揺らぎ始める。
ベンも教育方法について他の大人たちから指摘を受け、自分は間違っていたのかと悩み始める。
その悩みの果てにあるラストシーンは、どこにでもある家庭の食卓かもしれないが、素直に感動することができた。
七沖

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