シネマスカイウォーカー

クリード チャンプを継ぐ男のシネマスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

4.4
ロッキーサーガの新シリーズ始動。
クリードシリーズ第1弾。

『ロッキー4 炎の友情』にてリングの上で散っていったロッキーのライバルであり友であったアポロ・クリード。そんなアポロの隠し子であることが判明したアドニス・クリードは十分な教育を受け安定した人生を送っていた。ボクサーの血が流れる彼は性にあわないデスクワークの職を辞し父の後を追って独学でボクサーの道を進んでいく。ノウハウを掴めずにいたアドニスは父の旧友である伝説のボクサー ロッキー・バルボアの元を訪れるのであった....

主人公をロッキーからアポロの息子にチェンジした新シリーズ。父親の影と戦いながらスター街道を駆け上がっていくアドニスの成長の物語をロッキーと重ねて見ることが出来ると同時に「2世」「親の七光り」との戦いというシリーズにはなかった新たな要素を上手に描いており、1本の映画としての完成度が高い。ロッキー(シルベスター・スタローン)というシリーズを牽引してきた父の影を拭えるかというこの映画におけるメタ的な挑戦においても勝ちをおさめることの出来た1作だと思う。この”スピンオフ”に留まらない完成度はマイケル・B・ジョーダンの存在感とライアン・クーグラー監督により腕の見せ所であったと思う。

オープニングからロッキーのテーマを使ったらタイトルコールに一切頼らず、「彼の名は?」と聞いたアドニスに対して『CREED』と出る、ここからもう最高過ぎる。そこからも一切ロッキーのテーマ曲を使わない徹底ぶりが「心機一転、新たな作品を作るぞ」という意気込みが感じられる。

ロッキーのメンターとしての活躍も注目すべき点の1つだと思う。『ロッキーザファイナル』でエイドリアンを失い、レストランを営むロッキーは親友のポーリーも失い明るく振る舞うものの内心は生きる気力を失っていた。そんな中に現れた旧友の息子の存在によって再び生きる気力をボクシングという形で見出す。エイドリアンと同じ病気になり、1度は治療を拒み妻の後を追いたいロッキーがアドニスと共に自分と戦いガン治療に挑む姿は涙無しには見られない。

いよいよ訪れるアドニスとチャンピオンとの戦いアドニスが圧倒的に押され絶対絶命になったその瞬間に満を持してかかるロッキーのテーマが最高過ぎる。
試合の結果は判定負けというシリーズ1作目の『ロッキー』に近い形にはなるがロッキーとアドニスの勇姿には湧き上がる何かを感じざるを得ない。

「誰かが階段を増やしたのか?」とランニングコースのゴールの階段を上がりきれないロッキーを横からリードするアドニスこの2人にお互い欠けていた父と子の友情が芽生えるラストは完璧な締めくくりだと思う。

シリーズものの続編として古参ファンへの迎合に媚びず新たな要素を織り交ぜながら始動した本作は非常に良いできだと思う。