風来坊

ボーダーラインの風来坊のレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.5
全編を包みこむ緊張感と臨場感…冒頭から引き込まれる。捉え所の無い台詞の応酬からもヒリヒリとした物が伝わって来ます。。麻薬戦争に関わる人達を淡々と描写しているが軽い感じはなく切り口は重厚。派手な展開や演出はあまり無いがそれでも何故か迫力を感じる。

麻薬戦争の真っ只中に立つ事になった畑違いの女性捜査官、過酷な現実の中で自分を失いそうになる葛藤とその先にある信念を貫こうとする姿は熱い。物語の余計な説明をしてくれないので観客も主人公と同じ目線になりその辺の演出は巧み。タバコが小道具として効果的に使われている、嫌煙の世の中にあって珍しい。一見本編には関係の無いような話がここに繋がるのかという驚きもありました。

女性捜査官役の女性は雰囲気がヒラリー・スワンクに似ている。芯の強さが滲み出ていて役柄にピタリとハマっています。ジョシュ・ブローリンの飄々とした感じ、ベニチオ・デル・トロの死んだような暗い目と役者陣の演技は凄味がありました。

正義を守るだけじゃ悪は倒せない…綺麗事だけじゃ悪に近づけない…自分自身を汚せるか汚せないか…分かる気がするし分かりたくない…そんなやるせなさを感じる映画で決してスッキリしないが硬派な犯罪サスペンスでした。
風来坊

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