予想をこえて重かった。ヴィルヌーヴの俯瞰的で美しい緊迫感のある映像、ヨハン・ヨハンソンの重厚な音効はやはり観ている人間の五感を的確にざわつかせる。これがたまらない。
麻薬カルテルとの戦い。
妻と息子と慎ましく暮らす汚職警官。
正義を貫こうとする女性捜査官。
善悪を越えてもという国の意思。
妻と娘を殺された男の復讐。
ベニチオ・デル・トロは独特な存在感を放つ役者だが、この映画では怪演と呼んでもいいほど。全ての立ち振る舞いに匂い立つような迫力がある。MCUでもラスボスを演じるジョシュ・ブローリンもここでは、まるでホンモノ。主役のエミリー・ブラントも頑張ってたけど「Sicario」…暗殺者という原題通り、後半は意図的にデル・トロ目線に移行していたな。
アメリカと麻薬。
繁栄と蟻地獄。
規定と逸脱。
正義と戦争。
善と悪。
生と死。
「おまえを雇ってる組織は俺と違うのか？」
人間はいつかこの負の連鎖を断ち切る事が出来るのだろうか。
デル・トロとブローリンのスピンアウト的な続編が企画されてるとのこと、監督違うみたいだけどヴィルヌーヴじゃ無いとこれを超えられる気はしないなぁ。とはいえ、ちょっと見てみたい。
