黒人や巨人症など、奇異な外見を持った人を見世物にする「フリークショー」興行主のお話。
公開されているあらすじは、「誰もが“オンリーワンになれる場所”をエンターテインメントの世界に作り出し、人々の人生を勇気と希望で照らした」となっている。
ウソは書いていないけど。こういう巧妙な言い回しは不誠実で、悪意すら感じる。
この映画に出てくるフリークスは、目を背けるようなデザインではなく、みなかわいらしい。
フリークスが昔より抑えた表現になるのはご時世だから仕方ないだろう。しかし、この映画は「多様性を認め合うこと」をテーマの一つにしているため、そこをぼやかした結果、製作者自身が彼らの存在を覆い隠しているように見えた。
肝心のストーリーは非常に単純であり、貪欲社長の栄衰記。
平坦で驚きのない物語を、美麗な音楽とダンスで盛り上げる。
しかし、主人公は劇中でも指摘される通り、とんでもない自信家であるため、最後まで彼にも周囲の人物にもまったく共感できない。
恋愛要素も少しあるが、修復できなさそうなことになっても、追いかけてグッと抱き寄せれば解決。家族愛もちょっと入れました。
全体的に、こういう寄り道が積み重なって、テーマが散らばった印象を受けた。
また、ミュージカル映画そもそもの問題ではあるが、演者が各場面で感情をそのままストレートに歌詞で説明するため、特に演技はしない・・・というか歌って踊って、演者もそれどころではない。
歌って踊って対話するため、深刻なシーンでもなんだか楽しそうに見えて、興が冷めてしまう。
あと、クドいなあと感じた点は、雑居ビルの屋上で大勢で踊ったり、背景をわざとハリボテっぽく見せたりするところ。アメリカのクラシカルなミュージカルってこうでしょ?という、分かるでしょ感を出してくる演出もいやらしい。
フリークショーについて、製作者の「興行はどんなものであれすばらしいものだ!」という強い意志を押し付けられるのに、最後まで違和感をおぼえました。それこそ色々な意見があるんじゃないかな。
「俺がイジって面白くしてやってる」というのは、いやがる人もいるでしょう。
なかなかの問題作だと思いました。すごいわ。