このレビューはネタバレを含みます
これグレイテストショーマン?と思わざるを得なかった。
まずオープニング、ララランド(今作の作曲家がララランドでも手掛けたらしい)を彷彿とさせる高揚感あふれる感じ。ああ、ミュージカル映画観に来たと思わせるつかみは最高。ただ、ここからどんどん気が滅入った。
もう誰もが言ってるけど、ストーリーが浅すぎる。この手の話の場合、何かしら苦労して最後の方で大団円っていうサクセスストーリーだろうなと思ったら、まあその通りで、別にそこではないんだけど。
主人公は意外と早い時点で成功しちゃうし、そもそもなぜサーカスをやろうと思ったのか幼少期からも読み取れなくて(後の奥さんを笑わせるシーンはあるけど)よくわからなかった。
そして主人公クズ過ぎじゃないか。ユニークな人をあくまで金稼ぎの手段としてしか使っていないし、ザックエフロン演じる劇のプロデューサーやオペラ歌手を引き入れていくとことかはもう今のディズニーのように買収を繰り返してエンターテインメントを牛耳る様にも重なって見えて怖かった。
それで持って真の芸術とかいうものに目移りしてサーカス=フィクションを捨てていくのが不快だった。今こうして映画を見に来ているのも日々の現実から離れてどうかこの二時間だけは嘘やまやかしでもいいから夢を見させてと思って映画を見に来ているのに作品内でこうされるとたまったもんじゃない。ヒュージャックマンが悪者というと「チャッピー」を思い出すけど、こっちの方が断然不快。
その分、この後続く、キアラ・セトルが歌う「This is me」は結構胸熱だった。でもこの歌い上げるシーンでキアラとゼンデイヤしか写らないのは最悪だった。誰がどう思おうと、これが私だ。と高らかに歌い上げるシーンなのだからサーカスのメンバー各々をきっちり見せて欲しかった。
この後も「お前らよくそんな簡単に許せるな」とか「さっきと言ってること違くね」と思う点が多々あった。
エンディングで「真の芸術は人を幸せにすることだ」的なことが画面に出た瞬間、一番言って欲しくなかったのにー(言っちゃったよ)と思いつつ劇場を後にした。
音楽はいいと思ったけど、ミュージカル映画における歌のシーンは登場人物たちの感情表現の一種だったり、セリフをリズムに載せてるわけだけど、ストーリーが薄く、テンポがいい(いや、良すぎて中身がない)ためさっきの行動に対してなんでこんな晴れやかに歌ってんだよどうしてこんな歌詞なんだみたいな因果が滅茶苦茶でわけわからなかった。
これは余計かもしれないけど、ミシェル・ウィリアムズはなんかこの映画には合わないと思った。(ブルーバレンタイン、マンチェスター~みたいな映画が似合う。)