あをによし

グレイテスト・ショーマンのあをによしのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
3.6
皆んな一緒じゃなくていい、というテーマは食傷気味だし、きっと実際のバーナムはこの映画のような人物ではないだろう。それでも、ミュージカルシーンの華やかさ、個性あふれる登場人物たち、閉鎖的な上流階級社会の描き方など、アメリカのショービジネスの礎を築いた興行師P.T.バーナムに相応しいエンターテインメントに仕上がっている。個人的なハイライトは、ジェニー・リンドの歌唱シーン。このシーンは、登場人物それぞれの関係性や、その後の展開のすべてが詰まっている為、映画の中でも非常に重要だが、各キャラクターの心の機微を俳優たちが見事に演じている。まず、本人が歌っているのではないが、観る者すべてを圧倒するリンドのパフォーマンス。それを観たバーナムの勝ち誇った表情と、彼を見つめるチャリティの喜びと不安が入り混じった視線。“Take My Hand”のタイミングでアンの手を握ろうとするフィリップ。このシーンにおける一連の流れは何度観ても飽きない、まさに名場面だ。
ストーリー展開はありきたりだが、私自身が愛してやまない映画、ポップカルチャーとは何なのかを改めて考えさせられる内容でもあった。映画や音楽を通じて、私たちは何を共有しようとしているのか。誰かと何かを共有したいという気持ちの切実さ、そして美しさ。一緒に映画を観たいと思う人がいることの貴さ。何をするにしても、自分を理解してくれる人、そして理解したいと思う相手がいてこそだ。皆んな一緒じゃなくていい、と思えるのは、そう感じさせてくれる大切な人がいる時だけなのだから。
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