ままならない今の生活から抜け出し、あらゆる手法で夢を見させてくれるのが映画の一つの作用だと思う。
しかし、その夢を見させるためには、ある種の説得力が必要となる。主人公の苦悩が理解のいくものか。成長の過程に飛躍はないか。
僕たちは論理的な考えを必要とする動物だから、そういった納得感なしに物語に没入できない。それは例え映画という虚構においてでも。
この作品が描き出す夢は確かに大きい。
貧困から抜け出し、成功はつかめること。マイノリティにも居場所はあること。愛、友人、家族。
それらをミュージカルにのせ、高らかに歌いあげる様は、人間讃歌に溢れてる。
ただ、それを表現する上での説得力は全く皆無だった(と個人的に思ってしまう)。
貧乏で頑張ってきたのに、成功した途端人の話をろくすっぽ聞かないバーナム。あれほど大事にしていたマイノリティの人たちをなおざりにしたかと思えば、自分がぼろぼろになると助けを求める無責任さ。そしてそれを無条件で許す周り。ほぼ浮気の状況に最終的に理解を示してしまう家族。
あげれば枚挙に暇がないが、映画の見せる夢に比べ説得力の部分が弱く僕は没入感が得られない映画だった。
それでも、歌の部分における完成度は非常に高く、その都度鳥肌がたった。それらの名曲たちは日常生活に戻っても、耳に残り続ける夢だったとは思う。