ロッツォ國友

アサシン クリードのロッツォ國友のレビュー・感想・評価

アサシン クリード(2016年製作の映画)
4.3
「良い大人が、まるでガキじゃ」
「あんな事をする理由があるのか?」
「何やってるのかしら?」
「いつまであんな事やってんだ?」

…懐かしい……!
市民に訝しがれ、物乞いに石を投げられ、テンプル騎士団に問答無用で抜刀され、師匠のジジイに武器返却を焦らされながら過ごしたあの日々。

まさかあの、荒削りながらも斬新な気持ち良さを魅せてくれたPS3最初期の無名ゲームが、ついに劇場放映までされるとは!!

完全にファンムービーだし、俺はファンだし、もう映画として落ち着いて分析などできたものではない。
よって初見の方が観たらどうこう言う視点もないので、ファンムービーとしてどうだったのかしか書かない。


アサクリシリーズは初代、2、ブラザーフッド、リベレーション、ローグをプレイ済み。
初代が個人的には最高傑作で、2はそれへの味付けが見事だったけど、それ以降はマンネリ化が進み、新要素を入れれば入れるほど元作品の想い出が揺らぐようになっていったが、人気ゲームシリーズとはすべからくそういうものだ。

絶対的な力を持つ「秘宝」を巡り、異なる信条を持つ二つの教団が殺し合いを続けてきた歴史を、最先端科学技術の塊である「アニムス」で紐解こうというのが大枠のストーリーである。
カギを握るのはアサシンのDNAで、その謎を追えるのがテンプル騎士団の科学技術で、両方揃わなくては全ての秘宝が揃わないもどかしさだけでこれだけのシリーズを作ってきた。


初代は秘宝を巡る戦いの始まりを描いていたが、2では世界中で数々のアサシンが活躍しているよ、という設定が正式にスタートしたので、それ以降はぶっちゃけUBI softが世界史の教科書で気になったところをテキトーに掘り返してアサシンとテンプル騎士を潜り込ませればいくらでもシリーズを作れるようになったので、本作もそんな数あるアサシンの中の1人ってことで十分説明がつく。

アサシン教団は秘宝を静かに守り、人々の自由意志を尊重した上での世界平和を目指す。
テンプル騎士団は秘宝と科学技術を積極的に使用して人々の意思をコントロールし、統率と秩序によって世界平和を目指す。
スターウォーズでいうジェダイとシスの関係性に似ている。


実際のフィールドでは権力のあるいけ好かない奴は大体テンプル騎士かその仲間で、優しくて良い人そうなのは大体アサシンかその協力者って感じで安易な二分化に頼りきってはいいるものの、一応ストーリーとしては異なる正義を掲げる二つの信条が争う構図になっている。


本作はそのシリーズの構図やアニムスの設定を全て生かして綺麗にまとめており、映画の為にゲームにあった要素を殺すような事は一切ないのが何より好印象。

何も知らない不幸な男が連れて来られ、訳も分からずアニムスで過去の壮絶な記憶を辿る旅に出る…
記憶を追ううちに、テンプル騎士団が求める核心に近づけば近づくほど、被験体の男もまたアサシンとして目覚めてゆく。
アサシンが目覚めるのが早いか、テンプル騎士団が秘宝の在り処を知るのが早いか…そういった駆け引きをちゃんと劇中でも取り込んでいたのも良かった。

当のアニムスは、いつもの寒そうなベッドではなく映画仕様にド派手な上から掴むタイプになっていたが、先祖の記憶とアニムス使用者の動きがシンクロするシーンを描く上で大きな役割を果たしたばかりでなく、終盤に入るあのシーンで「流入現象」が開花する描写に活きていて見事だった。
というか…最高だったw


手首に装着するアサシンブレードの為に薬指を切り落とす儀式は技術の進歩と共に廃れたという設定ではあったが、まだ技術が進歩してなかったのか、映画ということでファンサービスを入れたのだろうか。
もうその時点でめちゃくちゃにアツいシーンだ。あれは必要だった。

そして何より、パルクール…もといスプリントを駆使した数々のバトルシーンも本当にカッコ良かったし、ちゃんとアサシンの闘いとしてデザインされていて気持ち良かった。
知ったこっちゃないが初見の人も、バトルシーンだけは面白かったんじゃないですか?(鼻ほじ


物語の始まりから着地まで、本当にしっかりとアサクリしていて気持ち良かった!
けれども「頑張って映画化してる」程度のものじゃなく、非常に高いクオリティで仕上げているところに何より驚いた。


面白くてカッコよくて懐かしい。ファンムービーとしてこれ以上ないレベルだ。
問題は、金があれば次回作も作りたい!って感じのエンディングにしてあったことだが、当のTOHOシネマズでは、グッズは売ってない(無い訳ないよね…?)し、公開2日目だというのに一番小さい劇場でしか放映されていなかったところ。
映画のノリも初見なんか微塵も考えてない設定でファンとしては有り難かったのだが、上映後の雰囲気は…ぶっちゃけ良さそうではなかった。


本当に良いものを作ってくれた、ファンに文句を言わせないレベルで映画化してくれた。
それだけで数多あるハナクソにも等しい原作シカトしまくりな低クオリティの映画化作品群とは一線を画すし本当に嬉しいが、もちろんその分一般には敷居は高いと思う。
宣伝もまあまあ力は入れてたが、興行収入は怪しいところだ。海外での評判に頼るしかないだろう。

ゲーム、それも風当たりの強い殺人18禁ゲームの映画化ということで、当然の扱いと言えるが、そんな中でこの作りは本当に勇気がある。
今後色々な作品を映画化して欲しい!…とまでは思わないけど、新しいゲームビジネスのカタチとして、今後に心から期待したい。


ありがとうUBI。
その勇気に感謝。


〜〜(追記)〜〜
他のレビューやTwitterでの感想を見ていると「エデンの果実の説明がねえ!」という不満が噴出しているので一応書くと、エデンの果実は果物ではなく、大多数の人間に幻覚を見せその心を操るという特殊能力があるシロモノ。秘宝は他にもあるが初代から出ているのがこれ。
テンプル騎士団はソロモン神殿からエデンの果実を見つけその効果を知るや、幻覚で人々の心を操る=自由意志を奪い統治するという理想実現の為に使おうとし、自由意志を尊重しようとするアサシン教団がそれを奪い阻止すべく戦う、というのがストーリーの根幹になっている。
元々、幻覚を見せ人を操る以外の説明はゲームでも無いのが実際のところだが、映画でいうならテンプル騎士団に一番手に入れて欲しくないのがエデンの果実、という説明が一番分かりやすいかもしれない。
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