てつこてつ

アントラージュ★オレたちのハリウッド: ザ・ムービーのてつこてつのレビュー・感想・評価

4.3
俳優マーク・ウォルバーグが自身の体験を基にプロデュースしたHBO製作の、日本ではスカパーFOXチャンネルで放送していたテレビドラマシリーズの大ファンだったので・・。終わってからもう10年も経とうしているという事実に感慨深い。

ぶっちゃけ、自分のようにテレビシリーズを見ていないと、この映画版だけ観ても、一応ストーリーには付いていけても、続々と登場するサブキャラのこれまでのエピソードや人間関係が分からないので、この作品が持つ独特なテイストの本当の醍醐味は味わえないと思う。

逆を言えば、ドラマシリーズのファンの方なら、納得が行く見事な終わらせ方。例えるならば、「ダウントン・アビー」のドラマ版と映画版の関係性に似ているなあと、作品の性質は全く違えど、連続ドラマシリーズの映画化の完成度のレベル高さの面では個人的には思える。

自分は何と言っても、ドラマ版でエミー賞最優秀助演男優賞を受賞した、傲慢で口が悪く偏見に満ち満ちていながらも男気を見せる敏腕エージェントを演じたジェレミー・ピヴェンの演技が大好きだし、彼に罵られまくりながらも巧く立ち回り、やがて上司の絶大な信頼を得るゲイの中国系アメリカ人のアシスタントを演じたレックス・リー、一癖も二癖もある広報担当を演じたデビ・メイザーといった役どころを特に気に入っていた。

また、アメリカのエンタメ世界に於ける、テレビ局と映画製作会社や映画スタジオと、タレントとエージェント(芸能事務所)、広報担当の関係性が業界物としては実にリアルで勉強にもなり、興味深かった。

元々、プロデューサーを務めたマーク・ウォルバーグや様々なスター俳優が、要所要所で本人役でカメオ出演して華やかなドラマシリーズではあったが、さすがシリーズを有終の美で完結させたこの映画版では、ジェシカ・アルバ、アーミー・ハマー、リアム・ニーソンといった日本でも知名度がある大スターから、NFLやNBAの当時の大スターや、'株式投資の神様'とも称されるウォーレン・バフェットや実際の映画スタジオのトップ、この映画作品が制作される前に不倫離婚でゴシップ紙の話題をさらったケルシー・グラマーなどのカメオ出演は、それなりにアメリカの芸能情報やメジャースポーツ選手に精通していないと「誰これ?」状態になる可能性は大。

自分自身も、この作品で、スター俳優のentourage=取り巻きの一人をドラマ版から演じてきたジェリー・フェラーラが恋に落ちる美しい女性総合格闘家のロンダ・ラウジーという人物は全く知らなかった。

エイドリアン・グレニアー演じる人気がうなぎ登りの若手スターの初監督映画の出来映えに対してイチャモンを付けるテキサス在住の大富豪の親子にビリー・ボブ・ソートン、「シックス・センス」「A.I.」の名子役の面影を少しだけその童顔に残しながらもでっぷりと太ったハーレイ・ジョエル・オスメントのキャスティングは楽しかった。

映画が完成披露されるまでのトラブル、ドタバタ、メインキャラクターたちのワンナイトラブなどの、ドラマシリーズ同様、どちらかと言うマチズモに偏ったストーリーがメイン。

ところが、意外にもエンディングシーンには、前述のゲイのアシスタントの結婚式を用意し、しかも夫役には、84年ロス五輪飛び込み金メダリストで後にカミングアウトをしたグレッグ・ローガニスをキャスティングし、同じくカミングアウトした「スター・トレック」のジョージ・タケイを思わぬところで登場させたりと、失礼ながら勝手にホモフォービアのイメージを持っていたマーク・ウォルバーグのLGBDへの理解の高さに驚かされた。

また、韓国ドラマリメイク版が、第1話だけ見た限りだと、かなり頑張ってそれなりに面白い出来ではあったけど、やはりハリウッドならではのあのテイストを韓国のエンタメ界に置き換えるにはどうしても無理があり、大コケしたというのもどこか納得できる。
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