「セクシリア」
冒頭、人工授精、医師の父、太陽恐怖症、性の快楽、祖国の過激派、亡命の皇帝の息子、青年と女性の恋、バンドのボーカル、変人。今、奇想天外なストーリーが幕を開ける…本作はペドロ・アルモドバルが原案、監督、製作、脚本をこなした1982年のエロティックコメディーで、この度BDを購入して初鑑賞したがアントニオ・バンデラスが若々しい。ストーリーも相変わらずアルモドバルの強い独特の世界観が作り上げられている。
さて、物語は情熱の国スペインの首都マドリッド。ロックミュージシャンで淫乱症の女セクシリアと言うとんでもなくブットんでいる女性は、ライブで出会った青年リサにひと目ぼれする。だが、彼は実は亡命してきたティラン国の皇太子で、しかもゲイだった…と簡単に説明するとこんな感じで、まだブレイク前のバンデラスが出演している。
本作は冒頭から音楽が流れ大きな市場を上空からとらえる。そこにサングラスをかけた革ジャンのブロンドの女性が歩く場面、サングラスを市場で物色しているスーツ姿の男、2人のカットバックが映される。そしてテラス席で一服する男女(ゲイの男1人)。そしてアルコールを飲みラリる。そしてそのゲイはテラス席に座っていた冒頭に出てきたサングラスの男にとある伝言メッセージを店のボーイに彼に届けさせる。そして2人は会話をしてその場を立ち去る…。
続いて、カメラは街で出くわした医学生と言う若い男性(アントニオ・バンデラスが演じる)と出会い、2人は部屋に行き裸になり会話をする。どうやらゲイのようだ。そしてカメラはバンドがステージに立つ場面へと変わり、破廉恥な歌を歌い始めるド派手なファッションで。そして、複数の風変わりな人々の奇想天外な物語が垣間見始める…と簡単に説明するとこんな感じで、この映画持続性があまりにもなさ過ぎるカットだらけで説明が大変。簡単に言うとバラバラなカットが映り込んで情報量が多すぎる。
いゃ〜この作品にも変態の連中が多く出てくる、ペニスを固くするためとか言いながら老人がその薬を飲んで強化しようとするわ、クリーニング屋の店員の女性がドレスを預けてきた女性のそのドレスを嗅いで気持ちよくなったり、そのドレスを自分に当てて鏡の前で素敵とか言い始めたり、男に大型動物の発情を抑える薬を飲み物に混ぜて飲ませたり、しかもそれが自分の父親だったり…頭がオカシイ連中は健在である。
そんで娘をベッドに縛りつけて父親が娘とセックスしようとするのとかもやばいし、バンドの歌手で"私をしゃぶってディナーの前でもディナーのあとでも"って歌詞も過激的で、ステージもマジで笑える。でも歌ってる曲はかっこいいんだよね。確かSuck it to me って曲だ。
この映画の印象的な所は女装家が写真小説を撮影しているシーンを楽しみつつ、スタッフに電気ドリルで殺人鬼に脅されている間、電話に出て"今はあなたと話せません、私はサディスティックなシリアルキラーに攻撃されている。生き残った場合は、折り返し電話します"のシーンはシュールで笑えた(それは最高の留守番電話のメッセージを思い起こさせる)。からのコンサートでの乱交もウケる。騒々しい茶番劇である。
あと1980年代の衣装と髪型が奇妙さを増していて、今見ても原宿系の人たちがそんな風な格好しているのを思い浮かべる。映画のトーンを少しだけハリウッドの大騒ぎに引き込ます演出が個人的には嫌だった。まぁそれでも洗練されたスパイシーで楽しい時間を楽しみたい人には、この映画をお勧めできるかな。スペイン映画独特のテンションがある。
余談だが、監督自身も女装して歌を披露している。