あにお

ゴースト・イン・ザ・シェルのあにおのレビュー・感想・評価

2.8
これ、どっちつかずすぎて原作厨にも初見層にも評価されないんじゃなかろうか…。

原作(というかアニメ版)の世界観というか設定に魅せられた立場からすると、最初の2分10秒で「あ、これ違うわ」って悟るので、変にガッカリせずに済む。敢えて「電脳化」を排除したのだろうけど、それだともはや『Ghost in the Shell』というタイトルが完全に意味喪失する。“ゴースト”の概念はアメ公にはまだ難しすぎたか…みたいな残念感しかない。電脳空間という概念は軽んじられてるのに、そのくせ人類の情報化を匂わせる表現が出てきたりして基本的スタンスがブレてる感もある。いやもちろん全部理解した上で敢えての選択だろうけどさ。
その証拠に、制作陣はかなりの原作(ていうかアニメの)崇拝者だと思う。完全オリジナルの設定・ストーリーでありながら、極めて再現度の高いアニメ版オマージュシーンを効果的に散りばめ、継ぎ接ぎ感もちぐはぐさもとってつけた感もなく最高のクオリティで実写化している。素晴らしい。CGの違和感も皆無で(特に車の動きがスゴい。リアルすぎてスピード感がない)、もはや実写とCGの区別が付かない。てか、これほとんどCGじゃね?ここまでするならもう実写じゃなくてフルCGでええやん?何のための「実写化」だったのか…。という疑問を通して、「人間と機械の垣根がなくなりつつある」独自の世界観を表現している。見事である。

北野武だけ日本語っていう手法は素晴らしいと思うけど、肝心の演技は微妙だし、何言ってるのか分かりにくいから日本語セリフだけ字幕付けない風潮まじでやめてほしい。対して桃井かおりの英語なかなか味があって良いけど、演出的な観点で言えば北野が日本語なんだからそこは日本語でよくね?
あと原作厨的には、スカーレット・ヨハンソンを筆頭にキャスティングはなかなか良いと思うけど、トグサだけなんか違う。『スカイ・スクレイパー』の金持ち役はハマってたが、これはパロディ(『ジョニー・イングリッシュ』的な)にしか見えない。それ以降のメインキャラは存在感がゼロに近いが…詰め込みすぎになるからバッサリ切り捨てて良かったと思うよ。

それはさておき、テクノロジーを進める会社のトップがイーロン・マスク氏に見えて、内燃機関という「心臓」を持つ人々の手によって自動車の過度な電動化を食い止めようとする物語…に思えてきて個人的にはちょっと楽しい。いや全然そんな話ではないが
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