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ゴースト・イン・ザ・シェルのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

電脳ネットワークと肉体の義体化が高度に発達した近未来。少佐はタフで有能な精鋭メンバーを擁する公安9課を率いて、凶悪なサイバーテロ犯罪に立ち向かっていた。ある時、ハンカ・ロボティックス社の関係者が何者かに襲われる事件が発生。捜査を進める少佐の前に、クゼという凄腕のハッカーの存在が浮かび上がってくる…。

押井守監督によるアニメの傑作「GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊」を主演にスカーレット・ヨハンソンを迎えてハリウッドで実写映画化した作品。
劇場版アニメの印象的なシーンを上手く取り入れ、日本とは比べ物にならないハイレベルなCGで未来世界を再現しており、リスペクトに溢れている。
ハリウッド製なので、銃撃戦やアクションシーンも歯切れがよく、ダイナミックで見せ方も上手い。
アニメでしか描けないと思っていた世界だが「良く出来ている」と言って良い。
アニメと比較せずに単品で見れば、それほど悪くないSFの佳作だ。

冒頭の少佐の義体が作られるシーンは良くぞそのまま実写化できたものだ。
元ネタが香港の雑多な街並みに寄せていた風景は「ブレードランナー」の世界観とはやや違う、青空と高層ビル、巨大なホログラムの広告に溢れている。
また、街を歩く肉体と機械が融合した半ばロボット化した人間は、実写だと生々しく、しかも哀れに感じるのが良い。
映像はとても美しく、インパクトが強い。

だが、巨大な芸者や仏教僧で何を宣伝してるのか?ヘンテコ日本が残念。
看板や道路表示も然り。いい加減、日本が舞台の映画は、日本人に監修を任せて欲しいものだ。
その分、日本人キャストの北野武が、最後までずっと日本語で通し、自身の映画作品並みの見せ場がある。
そこを日本へのリスペクトだと受け取ろう。

ストーリーはハッカ社の研究員を狙った連続殺人事件を追うサスペンス。
事件の真相を追って犯人のハッカー・クゼに迫っていくうち、いつしか自分の脳に残るわずかな記憶に疑念を抱くようになっていく少佐。
真相はハッカ社による人体実験により、人間の肉体を奪われたクゼの復讐。
少佐もクゼと共にいた実験の実験の犠牲者の1人だと分かる。
かくして、少佐の活躍によってハッカ社の人権無視の大量殺戮は暴れ、一件落着。

アニメ版と違い、少佐が失われた過去を取り戻す、という分かりやすいストーリー。
ハリウッド映画らしくさほど難解さは無く、万人向けになっている。

残念なのは「全身が機械なのに、何を持ってして人間なのか?」「人間の魂はどこに存在するのか?」というアニメ版に見られた深い問いかけが無かったこと。
ガジェットや映像は充分にSFでありながら、考察を呼ぶSFマインドが無いのは非常に残念。

とはいえ、アニメ版と遜色ない映像は素晴らしい。
アニメ版の深淵なテーマ性とは比較をせず、別物として見れば充分に面白い。
久しぶりに完全なディストピアではない混沌とした未来世界を見せてくれた作品である。
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