石

攻殻機動隊 新劇場版の石のネタバレレビュー・内容・結末

攻殻機動隊 新劇場版(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

攻殻機動隊前日譚としては最高の仕上がりなのではないでしょうか。

これが原作版に続くのか押井版に続くのかは明示されていませんが、両作にある"広大なネットに去る素子"の伏線を事細かに散りばめています。言ってしまえばこれは攻殻機動隊ファンへのサービス部分ではあるのですが、ファンサービスを散りばめながらも話の軸はブレることなく、尚且つ今シリーズのテイストはキッチリ守るという複雑なバランスを保つことに新劇場版は成功しています。

今作の隠れたテイストとして、ファイアスターターやデッドエンド等物語内専門用語が飛び交っているのは攻殻機動隊ではお馴染みなのですが、今シリーズはそういった忌避されかねない要素を孕んでいるようで実は丁寧に説明しています。原作は漫画なので枠外に注釈が入るのですが、映像ともなるとそれは不可で、難解に難解を重ねて妙なグルーヴが生まれてしまったのが押井版だとすれば、程よく注釈を脚本に織り交ぜたのが今シリーズ。つまり話やテーマ等を理解させる気があるんですよ。ここが個人的には好きな部分です。

ストーリーに関しては、発展した世界の死生観というのは相変わらずで、今回は別ベクトルから刺していった印象です。機械化した身体でさえ時の流れ・時代の波には逆らえない場合としての打開策及び助けを求める先はネットの世界、所謂"第三世界"なのかなと。しかし、得に終盤は若干原作に引っ張られすぎている印象はありました。一定の水準まで行くと全員が全員その境地に至るんですかね。
ただもうそういった原作テイストを事細かに観せられたらもうアガるんですよ、もう。そうしているうちに無意識に「頂戴!頂戴!」と思っているものが頭の中で出来上がってくるんです。それをそのままこの新劇場版は観せてくれるんですよね。最高ですよ、ラストの暗殺シーンも「ここに繋げてくるのかぁ〜わかってるなぁ!」ってなってしまうんです。感涙ですよ。終わりにこんなもの持ってこられたら否が応でも気持ち良くなるし評価も軍上がりますよ。そう考えるとズルい作品とも言えます。

言いたいことが無いわけじゃない。幾ら何でも主人公部隊が万能集団すぎるとか、説明過多と描写ボカしのバランスがおかしくなってる部分があったりとか、そもそも首のコンセント部分毎回無防備すぎませんか?(どのシリーズにも言えること)とか、まぁあります。一番言えることは、この新劇場版単体だけじゃ十分に楽しめないですよね。
でももうどうでもいいんです。観たいものが観れたからいいんです。

世界観知識やSF素養は必要ですが、攻殻機動隊の"序章として"十分にオススメしたい一作でした。
石