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ソング・オブ・ザ・シー 海のうたのhasseのレビュー・感想・評価

4.2
演出5
演技4
脚本4
撮影5
照明-
音楽5
音響3
インスピレーション3
好み4

○「忘れないで。あなたの話や歌の中に私はいるわ」(ブロナー)

男女の悲恋の物語として描かれることが多い、アイルランド神話のセルキー伝説を、現代的な家族愛の物語に見事落とし込んだ秀作。トム・ムーア監督の前作『ブレンダンとケルズの秘密』よりも家族についての物語の強度が増したように感じた。

家族四人の距離感が細部までリアル。兄は妹を冷たくあしらい、妹は突っぱねられても兄についていく。土壇場での度胸は意外と妹のほうが優れているけど、妹が突っ走りすぎると、兄が引き止める。
父は息子より娘を溺愛し、母は娘以上に息子に愛情を注ぐ。これらの関係性が抜かりなく良く描けている。

父はセルキーの上着を捨て、フクロウの妖精マカは悲嘆にくれる息子を石化する。それは愛する人に起こる悲劇を防ぐための方策だったわけだが、結果的には誤った選択だった。そのような親の過ちを子供が正し、家族を正しい形に導くストーリーがとてもよい。子供たちは誰に教えられるわけでもなく、自分の意思で、直感的に正しいと思ったこと、やりたいと思ったことを実行していく。

ラストの家族四人が揃うシーンは泣ける。立ち去る母親を見る父と息子は悲しそうな表情なのに対し、娘は全て割りきったように微笑んでるのもなんかいいよなぁ。

ケルト音楽もよい。軽妙なリズムのdulaman大好き。
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