りっく

黄金の馬車のりっくのレビュー・感想・評価

黄金の馬車(1953年製作の映画)
4.3
映画冒頭より劇中劇の構成を取っていることが強調される本作は、幕が開くことで看板女優の人生が開けていき、そして幕が閉じることでそれが儚い夢であり、だが演じることでその儚い夢が一瞬のうちでも自分の人生であったかのような感触を得られる、そんな一抹の幸福感と寂寥感が襲ってくる傑作だ。

演劇という文化が未開の地で、観客がリテラシーを得ていく過程や、生まれ育った土地も地位も異なる人間たちが、演劇というフィクショナルな物語によって感動や興奮を共有する時空間を創り上げる喜びに満ちている。その光景やそこに流れる空気や温度は決して幻ではない。最後に幕が閉じて舞台にひとり取り残されるひとりの女としての彼女に万雷の拍手を贈りたくなる。
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