個人的には、1〜9のシリーズ全体を通して、一番好きな作品だ。あまり周囲には賛同されないが。
読めない展開に舵を切った勇気に拍手したい。前作「7」は悪くいえば「4」の模倣だった。でも、今作は焼き直しに甘んじることなく、新しい魅せ方、ストーリー展開をしている点が素晴らしかった。
キャラの心理描写を描くのが非常に上手い。レイ、フィン、ポー、レンの4人の人間ドラマをそれぞれにしっかりと描いている。
フォースの概念がルーカスのものよりかなり拡大解釈されているような気もするが、これはこれで個人的にあり。スターウォーズも時代によって変わっていくのだ。「フォースとはなんなのか?」をもっと広い意味で考えさせられる。
レイとカイロレンのフォースを使った対話もいい演出だった。場所が離れていても、フォースが二人を結びつけ繊細な心の機微を生み出していた。初の試みだが、それによって物語も深く新しいものになっていた。
映像美も素晴らしい。その絵柄の美しさだけで鳥肌が立つ場面がいくつもあった。
ーーーーーネタバレーーーーー
<ルークの老害化>
ルーク:凝り固まった価値観
ルークはレイに渇を入れられてしまう程、頭が硬いおじいちゃんになっていた。怯えて一人きりでいると、あんなふうになるのかもしれない。いや、逆かもしれない。凝り固まった価値観が、恐怖と孤立を生み出したのかもしれない。
前作が老害化している旧スターウォーズファンに媚びる内容だったが、今作は老害ファンを突き放す内容だろう。新世代にとってはジェダイや帝国は過去の異物であり、古くさい価値観や考え方でしかないのだ。
ルークはダークサイドに支配されるカイロレンの姿に動揺し殺そうとする。でも、それが引き金でカイロレンはダークサイドに堕ちてしまう。ルークのせいだったことがわかる。そのあまりに脆くて弱くて頑固なルークに、観客も嘆くしかなくなる。正直ルークには、マスターとして正しくカイロレンを導いて欲しかった。。。
でも、ラスト。ルークはレイにバトンタッチをする。レイが新しい価値観、世界を作るのだ。それは、なんとも言えないカタルシスを感じてしまう展開だ。
<フォース>
フォースは誰の中にもあり、誰にも特別になれるチャンスはあるというメッセージ。
レイの両親は、普通の人だった
※だが、「9」でそれは覆る
「フォースは人の持つ力ではない。生、死、腐敗、新たな命、、、 万物の間に存在するバランスとエネルギーである」
フォースは決して特別な力ではない。ジェダイの血を引いていなくてもフォースを使える。フォースが身近なものに感じる。
<スターウォーズシリーズそのものに対するか自己批評>
「ジェダイの存在がダークサイドを生んでしまっているのではないか」というルークの自己否定。それは、正義が現れると同時に悪も生まれること。コインの表があれば、裏もあること。光があれば闇があること。
正義を求めすぎない。光を求めすぎない。正義と悪の二項対立で物事を見ない。光と闇を対立させない。
「すぐに正解や正義を求めてしまう世間の風潮への警告」がテーマなような気がした。
失敗してもいいのだ。
いや、失敗して学べばいい。
ルークだって、アナキンだって、失敗ばかりではないか。
<戦わせて得をする一部の者たち>
「正義が勝っても悪が勝っても武器商人を肥え太らせるだけ」というベニチオ・デルトロの演じるコード破りの男のセリフ。
この世界の真実を表す言葉だ。戦争で儲ける一部の人たちがいるのだ。
スターウォーズシリーズは、ディズニーのドル箱になるから、これからも作り続けるのだろう。これからも、ディズニーを儲けさせるためにジェダイは戦うことになるだろう。
確かにこれからも作って欲しいのが本音だ。
しかし、「面白いし楽しいから」と言う理由で、求め続けていいのだろうか。これと似たような人間の飽くなき欲望が戦争や争いを起こしているのではないのか。つい、そんなことを考えてしまう。
スターウォーズは壮大な戦争であり、それを娯楽として消費している限り、戦争もなくならないような気がする。
人間は根源的に争いが好きなのかもしれない。