踏み絵
凄い美味しいと評判の塩ラーメンを食べに行って、
ふーん、こんなもんかと拍子抜けして帰って来た経験があります。
でも、よくよく考えればあの時の僕は、塩にトンコツの旨さを求めていたんですよね。
明らかに塩の持つ限界以上の旨さを、求めてしまっていたというわけです。
うんそりゃ、僕が悪いよな。
さてさて、
今年もついにこの時がやって来ました!!
今年はなんとスター・ウォーズのために休みを取る始末。
職場のみんなほんとにありがとう。
来年は6月よ~(笑)。
でもね···
2年ごとに僕らに熱狂をもたらす、
エンターテイメント最高峰が放つ新章は、
鑑賞に臨む僕らのスタンスが試されるという悩ましい作品でした。
果たしてこの問題作。
この先、更なる広がりを見せるであろうSWユニバースに引き続き参加をするか、
はたまた決別するかを僕らに迫る、
いわば踏み絵のようなものなのか!?
前作ラストでルークと対面を果たしたレイと、
その直後の時系列で、
激しさを増すレジスタンスとファーストオーダーの戦いを主軸に、
躍動する登場人物達が織り成す数々のヒューマンドラマ。
まず、これだけは言いたい。
前作から2年間の待ちぼうけを喰らえば、
そりゃ期待値はね上がるでしょうに···
その期待値をとことん上げてしまった僕に非があるのならばそれは謝ります。
でもね、それほどの期待に応えてくるのがスター・ウォーズなんであってさ···
いや、映画としてみれば素晴らしい出来なんですよ。
冒頭の緊迫した戦闘シーンは圧倒的なテンションで何度も叫びたくなります。
各登場人物達はこの2年間でキャラを自分のものにしたように感じとれて、
何やら奥深さがありました。
そして、何よりライアン・ジョンソンの表現力には脱帽しました。
冒頭でレジスタンスが避難するシーン。
若干の楽観ムード漂うなか、
空を見上げるとハイパースペースから現れるファーストオーダー軍。
空気が一変します。
ローグワンでもそうでしたが、
スター・ウォーズの代名詞であるハイパースペースへの突入描写ではなくて、
逆にハイパースペースから突如と現れるという表現方法は、
敵軍の恐ろしさだったり絶望的な状況だったりをうまく演出できる新たな手法。
ふと空を見上げたシーンでそれを微かに用いるという、ライアン・ジョンソンの感覚には、
クリエーターとしての類いまれな才を感じてしまいました。
ネタバレを避けたいのでこれ以上は書きませんが、
全編通してスター・ウォーズとしては革新的な映像美、表現法、演出に溢れています。
そして、むしろそういう部分にこそ、旧来のファンであればあるほど戸惑ってしまうのかもしれません。
映画としては素晴らしい。
でもスター・ウォーズとしてはどうだろう??
その問いかけをしたくなるファンはたくさんいる事でしょう。
がもはや、伝説の始まりである1977年から数えて40年。
シリーズものとして驚くほど息の長いSWにとって、常に均質な映画表現でかつ、全世代を満足させられるような作品なんて、
逆にありえません。
そうやって捉えてみれば、
EP7で懐古主義的だったのは、
過去の作品群に熱烈なファンへのせめてもの報いだったとも思えます。
今作にも過去作へのオマージュや、昔ながらのファンに向けられたうれしい演出もあり思わず涙しました。
でもやはり、
新シリーズの矛先は僕ら旧世代のファンにではなく、
新しい世代のファンにこそ向けられていると言わざる得ません。
前作でマズ・カナタがレイに向け、「過去ではなく未来を見ろ」と言いました。
そのセリフはそっくりそのまま従来のファンへと向けられていたのかもしれません。
今回の作品にて世代交代を果たしたのは、キャストだけでなく、むしろ僕ら観客なんじゃないのか。
だからこそ、スター・ウォーズとしてはどうだろう??
この問いがもつ古臭さを、古臭いと感じるかどうかが、ファンを新旧に振り分ける踏み絵なんだと思います。
僕はどうか?
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うん、旧タイプ(笑)
でも、これからも末永くスター・ウォーズと付き合っていきたいので、
今からもう一回観に行ってきます。
塩ラーメンを塩ラーメンとして味わおうとしなければ、
トンコツと比べて薄味のラーメンでしかない。
とにかく楽しもうという前向きさこそが、
僕が今後もファンで居続けられるいたって単純な秘策。
でもね、
まだまだどう転ぶか分かりませんよ。
2年後の大団円にむけて、
こんどは塩ラーメンに味噌の旨さを期待してみよう。
懲りない僕のスター・ウォーズ熱はまだまだ続きます。