かたゆき

ぼくとアールと彼女のさよならのかたゆきのレビュー・感想・評価

4.5
クラスの片隅で決して目立たず、ただひたすらその日を平穏にやり過ごすことを目的に日々を送る冴えない男子高校生、グレッグ。
唯一の友達アールとともに名作映画のパロディを創ることを趣味にしていた彼は、ある日、母親から衝撃的な話を聞かされる。
幼馴染で学校の同級生でもある女の子、レイチェルがなんと白血病と診断されたというのだ。しかもかなり深刻な状態らしい。
「そんなこと急に言われても知らないし、だいいち彼女とは友達じゃない!」――。
そう反論するグレッグだったが、母親に強引に押し切られて彼女の家へとお見舞いに行くことに。
「別に来てほしいなんて頼んでないし、同情なんてされたくない」――。
彼の訪問を受けたレイチェルは、さも鬱陶しそうにそう言うのだった。
そうして始まった二人の交流。義務と惰性だけの上辺だけの付き合い。
でも、二人の間には次第に友情のようなものが芽生え始め、周りからは付き合ってると誤解されるように。
グレッグは周りに流されるまま、アールとともになんとなく彼女のための映画を創り始めるのだが…。
冴えないオタク青年が、白血病を患う幼馴染の少女との交流を通じて次第に成長してゆくさまをポップに描いた青春ドラマ。

何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これがかなりの掘り出し物でした!
末期の白血病を患う彼女と過ごす青春の日々と言う、〝世界の中心でなんか叫ぶ〟的な感じのいわゆるベタな難病ものと言ってもいいのでしょうけど、見せ方がとにかく巧い!!
映画オタクのこの主人公が絶えず、自らの行動に映画オタク的な自己ツッコミを入れるので、そこら辺の青臭い難病ものにならずに済んでるんです。
「ここで普通の恋愛ものなら僕たちは良い感じになるんだろうけど、僕は主人公じゃないのでそうはならない」って何度も観客に言い訳するとこなんてナイスなヘタレ具合(笑)。
主人公とアールが創り続けてる名作映画のパロディや何度も差し挟まれるクレイアニメもポップで馬鹿々々しくてセンス抜群!
対するレイチェルも等身大の魅力が炸裂してて大変キュート。仕草や趣味の一つ一つがとにかく可愛くて、こりゃ誰でも恋に落ちますわ~。

でも、そんな彼女も抗癌剤の影響で髪の毛が抜け、後半はどんどんと弱ってゆきます。
「先に言っとくけど、彼女は死なずに回復するから」と観客を安心させといて、最後はまさかの展開。
いやー、これにはやられちゃいました(だいぶズルいけどね笑)。
久々に映画を観て泣いちゃいましたわ。観終わった今も、レイチェルの健気な笑顔が頭から離れそうにありません。
壁紙に描かれたリスの落書きなんてもう思い出しただけで…。
ユーモア溢れる展開で観客を楽しませておいて、締めるとこではきっちりおとす、なかなか完成度の高い青春ドラマの秀作でありました。
かたゆき

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