OASIS

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

アメリカ西海岸の小さな町に暮らす背の小さな少年が、戦地に赴いた父を呼び戻そうとする話。

「ライフ・イズ・ビューティフル」+「ニュー・シネマ・パラダイス」的な。
親子愛に、戦争に、ほんの少しの映画愛。
信じる事、そして信じ続ける事の勇気。
嘘偽りない純粋な想いに感極まる。

第二次世界大戦最中のアメリカ、カリフォルニア州のオヘアに住む8才の少年ペッパーはその見た目からリトル・ボーイとあだ名を付けられからかわれていた。
ある日、兵士に志願するものの徴兵検査に失格した兄の代わりに父親が戦地に召集される。
「リトル・ボーイ」とは主人公のペッパーの事はもちろん、広島に落とされた原子爆弾の名称にもかかっていて。
小さな少年の「戦争を終わらせ父を取り戻したい」という願いが叶った結果リトルボーイが落とされてしまったという皮肉な結末に、不謹慎ながらも良く考えられた展開であると感心してしまった。

どうにかして父を呼び戻したいペッパーは、司祭から全てを達成すると願いが叶うというリストを貰い、そのリストに従って一つ一つ項目を埋めて行く。
戦地で泥に塗れる父と、いじめっ子に立ち向かうペッパーの姿が重なる場面はカットバックが効果的に使われていて感動が高まった。
「やれると思うか?」と常に冒険心を忘れない父親への愛で目の前の障害を乗り越えて行く姿は「帰って来たドラえもん」的な感動があった。

日本軍の捕虜となった父の帰りを待つペッパーは、町の人々から疎まれ暮らす日本人のハシモトと関わる事で考えが変化して行く。
本来は憎むべき敵だが彼の想いの片鱗に触れ興味を示す、その複雑な関係性ははみ出し者同士の友情をより鮮明に浮かび上がらせ、強固なものとして描かれていたと思う。
名優ケイリー=ヒロユキ・タガワの過去に刻まれた何重もの年輪を感じさせる深みのある演技が、積み重ねて来た人生の艱難辛苦を滲ませていてその佇まいだけでキャラクターに何年も染み込んだような味が出ていた。

父親が脱走中に撃たれ、味方が父のブーツを奪って逃走するという場面で何となくその後の死者入れ替わりな展開が予想出来てしまったが、前述した効果的なカットバックがその良くある展開を感じさせず進行していて最後まで感動が失われたり冷めたりという事が無かったのは良かったと思う。
エミリー・ワトソン演じる夫の帰りを待ち続ける妻の逞しさが「信じ続ける事」をテーマにした作品の根幹を支えていて強さを感じたが、その代わり妻に言い寄るケヴィン・ジェームスが嫌なやつの役で割りを食ったという感じだった。
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