『レイテ・クレームの味』(ポルトガル/2012/74分)
監督:鈴木仁篤、ロサーナ・トレス
撮影:鈴木仁篤
録音:ロサーナ・トレス
編集:ロサーナ・トレス、鈴木仁篤
製作:ENTRE IMAGEM
共同製作:ACERT
ポルトガル中部のかつての職場である学校の前の家で暮らす96歳と98歳の元教師の姉妹のゆっくりと流れる日常生活。
──第2作『レイテ・クレームの味』(2012)は趣が変わり、室内のシーンが多い作品です。舞台となる家屋はどこでしょう。
ポルトガル中部のロサーナさんの祖母と、そのお姉さんが暮らす家です。ロサーナさんのお父さん、そして彼女自身も幼少期に暮らしていた家です。
──どのような経緯で、その家で撮影することになったのでしょう。
クリスマスにロサーナさんの家族がその家に集まった時に初めて訪れ、彼女の祖母がレイテ・クレームをつくるのを見ました。とても素敵な家でしたので、ここで撮影できないかとロサーナさんに提案しました。何回も訪ねては、そこに滞在しながら撮影していました。
──各カットの構図や光などは直感だけで撮れないと思ったのですが、いかがでしょう。また演出のアイデアはどのように生まれたのでしょう。
いわゆるドキュメンタリーをつくるつもりはなかったし、「これが映画になればいいな」と考えていました。一緒に住んで、彼女たちと生活しながら「こんなシーンがあってもいいのではないか」と、ロサーナさんと相談しながらつくっていきました。
──さらにこの映画で感じるのは蓄積された「時間」です。姉妹の動くスピードからは年齢が窺えるし、家そのものに宿った長い時間も感じ取れます。壁にかけられた写真や画からも、家や人物の持つ時間が垣間見えます。
家自体に歴史があって、そこに彼女たちが暮らしている。それを感じ取れたらと思いました。写っているものすべてに歴史や時間を感じます。
──何気なくごく短い会話からも姉妹の生活を見事にすくい上げています。
たくさん撮影した中から、二人で議論しながら選びました。
──作品全体がワンシーンワンカットで構成されているのは、編集でそうなったのでしょうか。ひとつのショットの長さはどう決められるのでしょう。
特に前もって構成があったわけでなく、編集でこの形になりました。ショットの長さは全体のバランスを考えながら編集で決まります。
──編集するうえで『丘陵地帯』との違いはありましたか?
編集の進め方は作品ごとに異なります。『丘陵地帯』は、何より音の作業に時間がかかりました。
──レイテ・クレームはポルトガルのお菓子ですね。作品全体で見ればレイテ・クレームにまつわるシーンはそう多くありません。それでもタイトルに使った理由はなぜでしょうか。
レイテ・クレームはポルトガルの家庭では人気のあるお菓子です。それは懐かしい祖母の家を思い起こさせます。