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トレジャーハンター・クミコのmのレビュー・感想・評価

4.6
東京の狭いアパートで一人暮らしをしている29歳のOL・クミコ(菊地凛子)。人付き合いが苦手で友人もおらず、唯一心を開けるのはペットのウサギのみ(名前はブンゾー)。
勤め先の社長はクミコにお茶淹れ等の雑用をさせながら、寿退社をネチネチと迫ってくる。歳下の同僚OL達の目も厳しく、新たに若い新人(河北麻友子)も入社してきた。実家の母親は電話で「結婚しないならとっとと実家に戻ってこい」としつこく言ってくる。
そんなクミコは映画「ファーゴ」のVHSを夜な夜な繰り返し観ている。クミコはこの映画の冒頭のテロップ『これは実話である』を真に受けて、映画の舞台のファーゴには実際に大金が埋まっていると信じているのだ。
いつかファーゴに行って大金を探し出す事、それこそが彼女の暗い人生の唯一の希望だった・・



という粗筋を書くとちょっとトガった日本映画かなと想像するが、この映画はアメリカ人監督によるアメリカ映画。

日本の男性社会の嫌な部分を体現する社長のキャラクターや、主人公の周りの女性達のちょっとした言動等、異国の男性監督が撮ったとは思えない日本人の心情のリアルさがある(日本描写はエレベーターのドアの模様が和風すぎる事以外は全く違和感がない)。

蚊の鳴くようなか細い声と、それと相反するような力強い眼差しで主人公を演じた菊地凛子が素晴らしい。
日本の社会で静かに追い詰められている様と、彼女自身の愚かさ、しかし何かにすがらないと生きていけない切実さが滲み出ている。

この映画自体も実在する事件・都市伝説を基にして作られているが、実際の話とは違うファンタジックな結末にはこの監督の優しさがこめられている。
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