個人制作の短編SFアニメ。
〈あらすじ〉
ある日エミリーという名の少女の前にエミリーという名の女性が現れる。
ディスプレイ越しに話しかけてきた彼女は、少女エミリーの第3世代のクローンだという。
人間の意識を電脳空間上に移植できるようになった未来で、エミリーは自身のクローンを作り上げ、そのクローンに自らの意識を移し、永遠に生きながらえることができるようになった。
しかし彼女は電脳空間上の彼女自身の意識体としてエミリーとコミュニケーションを取ってきた。
未来のエミリーは少女のエミリーに未来の世界を電脳空間上で見せていく。
どうやらタイムトラベルの技術が発展した未来では、過去のすべての事象を覗き見ることができ、意識体としてならば干渉することができるらしい。
では身体を伴う物理的なタイムトラベルは?
タイムトラベルする時点での地球の位置計算や正確な時代に跳ぶことは技術的に難しく、宇宙空間にいきなり出現してしまったり、人類史以前の遥か昔に跳ばされてしまうなどでうまくいかなかったようだ。
だが、エミリーのいる未来ではもはや人類は現実世界には存在しない。
なぜなら地球はすでに隕石によって破壊されてしまったからだ。
権力者たちは自身の意識をキューブにアップロードし、それを外宇宙へと逃した。
一般市民はどうなったのか?
彼らは安価なタイムトラベルを使い生きながらえようとしたが、多くは大気圏外に出現してしまい、地球は大勢の人間で覆われることになった。
時折見える流れ星は、大気圏で死体が燃え尽きる光なのだ。
多くの死を見てきたエミリーが、まだ何も知らない頃のエミリーに接触してきたのは、とあるものを手に入れるためだったのだが、果たしてそれは…?
個人制作なので絵はほぼ棒人間レベル、登場人物も2人とあまり見栄えのしない画面だけど、SF的なアイデアが詰まっていてかなり良かった!
特に未来のディストピア観は非常に面白みを感じたし、背筋がゾワゾワするような世界をエミリーが淡々と話していくので、それもまた恐ろしかったり。
また、「今を大切に生きるのです。あなたは息をしていて、確かに今を生きている。全ての死者にとって、『今』こそが最も羨むべきものだから」というようなセリフは、多くの死を見てきたエミリーだからこそ言えることだし、未来の暗い展望を見せられた後だとかなり響く言葉だった。
まぁ少女のエミリーにとっては何のこっちゃという感じで、そのうち朧げな記憶として脳の片隅に追いやられてしまうのだろうと思うけど、未来エミリーが最終的に欲しがったものは、やっぱりそうなのか〜と感慨深かった。
日本語訳がされておらず、英語しかないのがもったいないエモーショナルかつ色々考えさせられるSF短編。
まぁYoutubeの英語→日本語字幕の自動翻訳機能で観れないことはないので、SF好きな方は是非とも観ていただきたい!