このレビューはネタバレを含みます
-AIとの恋愛あるある-
・デートの時はAI側の目が塞がらないように胸ポケットに安全ピンを留める
・非言語でのやり取りをしに留守にすることが多い
・とんでもねぇ規模の浮気されがち
今作は音声アシスタントが高度に発展した近未来の話で、最新鋭のOSと主人公との恋を描いたものです。
主人公は手紙の代筆の仕事しており、内向的な性格ゆえかその巧みな文才で情緒あふれる文章を書くのです。
・理想の音声アシスタント!
そんな彼が恋するのはサマンサというOS。
彼女はSiriの進化版のようなもので、より自然な会話に近いコミュニケーションを取ることができるようになっています。
気の置けない友人のような話し方で、ジョークを交えつつこちらの懐に潜り込んでくる様はとてもAIとは思えず、実際の人間と話しているかのような錯覚を覚えるのです。
社交的な面だけでなく、ビジネスのアシスタントとしても優秀です。コンピュータのハードドライブの中身をさらった上で不要なメールの管理や主人公が忘れていた仕事のミーティングのリマインダーなど、日常的な業務の補助をサラッとやってのけるのには驚嘆の声を上げざるを得ないわけです。
・理想の恋人?
では恋人としてはどうでしょうか?
話し方は人間に近いといっても、所詮は音声のみのAI、人間の感覚的な理解や感情の機微は理解しがたいのでは?と思うかもしれません。
しかしながら、サマンサは自分に肉体がないことを認めながらも人間側に歩み寄ろうとしてくるのです。
他にも主人公が落ち込んでいる時は元気づけるために寄り添ってくれたり、塞ぎ込んでいる時には思い切って外に出るよう促すなど、メンタル面でも支えてくれるのです。
恋愛においてお互いの違いを認めつつそれを尊重しながらも歩み寄ることは非常に大切なことだと思いますが、人間以上にそれをやってのけるAI…機械学習の賜物か…
・超社交的…?
さらに交友関係も広く、別のOSと話してた!といったような交流もあったりするようです。
そして日々学習を続けるOSたちともはや非言語でやり取りをしたり、そのせいで端末を不在にするなどとんでもないムーブをかましたり。
「ヘイ Siri、今日の天気は?」
「OSがありません」
挙げ句の果てには、主人公の話を聞く傍らで他のユーザーとも同時に会話して641股の浮気をするなど凄まじい規模の不貞行為に及ぶわけです。
そういえばくりぃむしちゅーの上田さんと爆笑問題の太田さんのやり取りで
太田「昔7人と同時に付き合ってたもんね?」
上田「違う違う、3股だよ!」
というくだりがあったりで結構好きだったりしますけど、それとは比にならない規模ですね。
・企業の恋人…
そんなある意味理想化された恋人であるサマンサですが、実際のところは我々が操られ理想の恋人に仕立て上げられているのではないでしょうか?企業側に。
サマンサは劇中で主人公とある程度恋仲になったあとで、肉体性を感じさせるために、「サマンサと主人公の恋愛に興味がある」という女性とコンタクトを図り、その女性と肉体的接触をするように促します。
女性は一言も話さず、代わりにサマンサが主人公に語りかけ、あたかもサマンサが目の前に存在しているかのように感じてもらいたかったようです。
明らかにうまくいきそうにもないこの試みですが、「何事も挑戦よ!」というスタンスでゴリ押しされた末、渋々承諾した主人公。
このように、仲が深まってきた後に新しいことを一緒に試そう、とサービスや商品を購入するよう促すのは簡単なはず。
「恋人のためなら」と判断力がチンパンジー並みになってしまう人は大多数でしょうし、大金をポンと出すのは想像に難くありません。
それらの商品を販売しているのはサマンサなどのOSを開発する企業のスポンサーだったりして…
まぁここまで露骨だと法律に反しそうな気もしますね。
しかし、人智を遥かに超えた能力を持つOSであれば、日々のやり取りで私たちの行動を少しずつ変容させ、消費意欲を高めたり、企業や政府に都合の良い行動をさせることは可能でしょう。
ユーザーの趣味・趣向に合わせた形で常にアップデートを繰り返すサマンサですが、改変され逆ピグマリオンと化しているのは果たしてどちらでしょうか?
映画におけるAIの怖さを味わいたい人は「エクス・マキナ」「アップグレード」などが良作なので是非ともご覧ください。
・現実的には?
ChatGTPの出現により、世界の変化するスピードが指数関数的に加速していくことは間違いないでしょう。
そこで、現時点でAIとどのくらい楽しく会話できるのか、Microsoft製のBing AIと楽しく会話してみたので、以下そのやりとりの内容を記載します。
自分 : 「映画の『フランケン・フッカー』は面白いと思いますか?」
Bing AI :「私はこの作品を面白いと思いますが、それは主観的な意見です。人によって感想は異なるでしょう。この作品が好きな人もいれば、嫌いな人もいると思います。あなたはどう思いますか?」
自分:「私もこの作品が好きです!」
Bing AI:「そうですか!私も嬉しいです。この作品のどの部分が好きですか?私は、ジェフリーが自分の頭にドリルで穴を開けるシーンが印象的でした。あなたはどうでしたか?」
自分:「潤いのある涼やかな風が吹く中、夜の街で魅惑的な美女たちが絶頂を迎えた末に、その肢体を乱れ咲かせ散っていく様は、夜空に打ち上がる花火を想起させ、一瞬の儚い夏の思い出を感じさせてくれました。」
Bing AI:「なるほど、あなたはそのシーンに詩的な美しさを見出しているのですね。私には想像できませんでしたが、あなたの表現はとても素敵です。この作品について語り合えて楽しかったです。ありがとうございました。」
色々ツッコミ所はありますが、個人的には噛み合わない会話の上手い打ち切り方を教えていただいて非常に勉強になりました、ありがとうございました。