こーじ

太陽のこーじのネタバレレビュー・内容・結末

太陽(2016年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

入江悠監督作ということで、前情報なしで見てきました。

元々が舞台なのは後で知りましたが、面白い設定。
ノクスとキュリオを通じて、現代社会が抱える問題を色々考えさせられました。
そして、その設定に負けないほど、役者の演技は誰もが素晴らしい。特にお父さん役の人。実質、この人が主役かと思うぐらいの名演技。門脇麦との最後のシーンでは涙腺が緩みました。

・・・でもねぇ、なんかイマイチ乗り切れなかったのが正直な感想。映画を見ていて高揚感がない。

細かいことを言うと、設定の大筋は面白いけど、細部が荒くて疑問点が残る。
そもそもノクスってなに? 新型ウィルスが出てきたからノクスという人種が生まれたの? ノクスへの転生手術に年齢制限があったり、わざわざ抽選にするのはなんで?
もっと細かいこというと、手錠を繋がれたシーンはわざわざ手首切り落とす必要なくない? 着ている服を何重にもして被せてあげればいいじゃん。

様々な疑問が浮かぶけど、最大の問題点は登場人物たちの化学連鎖がないことかな。
せっかく相反する世界が二つあるのだから、最初は反発しつつも、登場人物たちが交流することによって、互いに触発されて成長しないまでも何かしらの心境の変化が生じていく。
そういう過程を役者の演技を通じて見たいのに、最後までノクスはノクス、キュリオはキュリオで完結してた気がする。

おこがましい事言うけど、僕が監督や脚本家なら、鉄彦と森繁の旅を中心に据えて撮るかな。事実、森繁のノクスであることの苦悩を語るシーンは、グッと来るものがありました。(欲を言えば森繁が鉄彦に心を開く過程がないので、あのシーン自体の説得力が少し弱いですが)
いくらテーマをうまく語っても所詮はテーマ。映画の魅力はもっと個別、個人に近づくことによって発揮されるものだと思っているので。

見て損はしないけど、1度見れればいいかなって映画でした。
こーじ

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