MasaichiYaguchi

教授のおかしな妄想殺人のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

教授のおかしな妄想殺人(2015年製作の映画)
2.7
監督・脚本を担当したウディ・アレンの最新作はスパイスが効き過ぎて苦味が残る。
原題は“Irrational Man”。
この“不条理な男”はホアキン・フェニックス演じる大学で哲学を教えるエイブ・ルーカス教授を指す。
この大学教授をはじめとして主要登場人物が独り善がりで、自分の考えや夢を人に押し付けて行動しているように見える。
ウディ・アレンは人間の不可解さ、一筋縄では行かない人生のままならなさを、時にコミカルに、時にシニカルに描き続けている。
しかし本作では、そのシニカルさ、ブラックユーモアが強過ぎて、性悪説とも言っていいスタンスで救いのないストーリーを展開している。
哲学で真理を追究し過ぎて人生に意味を見出せず無気力になった中年男と、そんな男の正体を見抜けず、無気力さをやさぐれた渋さとか、ミステリアスな魅力と勘違いして惹かれてしまう女子大生のヒロインや同僚。
出発点から間違っている恋が上手くいく筈もなく、教授が起こしたある行動から事態はあらぬ方向へ転がっていく。
元々、男と女が持つ思考や感情は別物だ。
その違いがあるから惹かれ合ったりするのだと思うが、本作の場合、夫々が抱く妄想というか、勘違いからスタートしているので質が悪い。
ストレスや悩みから逃れる為に妄想することは精神衛生上良いと思うが、あくまで心の内に留めていればの話で、それを実行してしまったら犯罪になることもある。
独り善がりな妄想に取り付かれた男と女のすれ違いを刺激的に描いた本作だが、何事も匙加減は必要だと思う。