グラッデン

教授のおかしな妄想殺人のグラッデンのレビュー・感想・評価

教授のおかしな妄想殺人(2015年製作の映画)
3.4
小さな街の大学に赴任した無気力な哲学科の教授があることを契機に「生きる意味」を見出し変貌する物語。

ウディ・アレン監督の最新作。ある種の狂気じみた行動も滑稽に仕立てる同監督の鉄板路線ですが、これまでの作品でも匂わせてきた哲学的な言い回しを完璧に武装した哲学教授を主人公に持ち出したところが原理的にも見えます。

ただし、主人公の大学教授の哲学に関する語り自体は意味を持っていると思いますが、観客としては正確に理解する必要はなく、おそらく「小難しいことを言ってるな」くらいの認識で良いかもしれません。ココに上手くノっていけるかどうかで本作の感触は分かれるのではないかと。

個人的な注目ポイントとなったのは、スクリーンに映される主人公のぽっこりお腹(役作りでココまで見事な腹周りを作れるのかと驚かされる)です(笑)ビジュアルと所構わず酒を飲みだす行動を見て、すぐさまにダメ人間さ加減を感じ取りました。

それでも、彼は生徒には人気があって、書いた論文は評価されているし、何故か女性にもモテるのだから「彼の立ち位置の方が作品の内容よりも不条理ダヨ!」と一瞬ツッコミを入れたくなりますが、それ以上に人生に疲れきった彼が「中年」であることには非常に説得力を感じます。

そんな彼だからこそ、本作のキーワードとも言える「生きる意味」を見出しすことの価値を大いに感じさせます。コレは普遍的なモノとは言えませんが、当事者に刺激的な動機がマインドを変え、行動を起こさせる。そして、それが「偶然起こったこと」という点も含めて、本作においては重要なポイントだと思いました。

また、変な話ですが、そんな彼に魅力を感じた女性たちもまた、彼の存在に意味を見出したのかもと思いました。彼は悩める男だからモテるのではなく、何かに満たされていない存在だからこそ、同じような境遇に共鳴していったり、自分には無い要素惹かれていくという構図だと思いました。

小難しいことを言ってエマ・ストーンに積極的なアタックを受けたい人生だったという妄想を押し殺しながら劇場を後にしましょう。おそらく、ニヤニヤした顔をしておりますので(私です)