このレビューはネタバレを含みます
regression 後戻り、【心理】退行
話の筋、結末だけ取れば「はあ?何それ」と駄作のレッテルを押しそうになるが、簡単にそれができない映画。これは日本人にはおいそれと理解できない問題を含んでいて、そこを知れば評価が一変する可能性あり。僕も一回観ただけじゃちょっとわからなかった。
まずなぜアンジェラの作り話をみんな信じてしまったか、ということについては現代のSNSで流布されるデマの数々、それに翻弄される人々を観ていると通ずるものがあり、妙にリアリティを感じてしまった。
あと悪魔崇拝について。日本人から見ると眉唾ものなんだが(それだけに未知の恐怖感はあるんだけど)、信じられないことにアメリカ国民の40%がいまだに創造論を信じており、つまり神の存在を本気で信じているという話がある。それは言い換えれば悪魔の存在も信じているということであり、悪魔崇拝という考え方も彼らにとってはリアリティを持ちうる話題と言える。それはラストシーンのアンジェラがテレビで語るシーン、それを観る人々の反応にも裏付けられている。
現に主人公も不可知論者だけど心の底で神の存在を捨て切れなくて、結果アンジェラの話を信じてしまった。アンジェラは一種の天才というか、抗い難い魔性を備えており、人の心を操る能力がある。最後は主人公が踏みとどまって、アンジェラの嘘であると見抜くんだけど、主人公も観客も終盤まで疑心暗鬼に囚われて話の真相が見えない、という点は映画の筋とか演出としては素晴らしいと今は思える。最後がアレなんで「何だ、ウソかよ〜」ってガッカリしがちだけど。あとアンジェラの家族の心理状態。父親が娘を庇って刑務所に入る。ちょっと一回観ただけではわからなかった。アンジェラの魔力が凄いのか、、??
僕はあのキスの場面ですべてアンジェラの筋書きなんじゃ?と思うようになった。そのくらいの違和感があのシーンにはあった。が、主人公はあれで完全にマインドコントロールされてしまった。
これは少なくとも何回か観てみる価値のある映画のような気がする。