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ヴィクトリアのADULTVIDEOMANのレビュー・感想・評価

ヴィクトリア(2015年製作の映画)
4.8
前にフィルセンのロビーで、年配のシネフィルの方々が「バードマンなんてただの演劇コンプレックスですよ」みたいなことを話しているのを耳にしてああなるほどなあと思った。そもそもワンシーンワンカットが目的化してしまったら映画も何もなくてお前芝居見に行けよってことになるわけで、だったら映画でしかできないワンシーンワンカットをやるしかなくて、そういうのができるのはなかなか稀なんだよなあ、と(たとえば「ションベン・ライダー」の冒頭や「さすらいの二人」「こうのとり、たちずさんで」のラストとかが映画的にすごい長回しであって、「バードマン」のCGに頼ったりする全く潔くない作りや、同じ相米でも演劇的模倣にすぎないような「雪の断章」の冒頭がダメな例、って感じか)。だからこの映画みたくワンシーンワンカットだということだけを売りに宣伝するのは私が売りたいのは<映画>ではないです演劇コンプレックスのかたまりですと言ってしまっているようなものでとても恥ずかしいし、ところでじゃあ相米やアンゲロプロスはこれは長回しの映画ですなんて宣伝したか?してないだろ?要するに何なのかというとこれは長回しに関わらずクオリティの高い映画ということで、長回しを殊更に超絶技巧として意識させることもないし、その上物語もしっかりしてる、ということです。普通の良い映画ということです。ワンシーンワンカットじゃなくても良い映画だっただろうということです。ついでにいえばテクノの鳴りも良いです。ただ長回しをアピールするだけの宣伝と、それによってこの作品が超絶技巧のものとしてだけ受容されてしまうのが嫌なだけです。
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