けーはち

ラスト・ナイツのけーはちのレビュー・感想・評価

ラスト・ナイツ(2015年製作の映画)
2.7
中世欧州風の架空世界で武士道を騎士道に置き換えて演じられる『忠臣蔵』──端的に語るならば、これで充分だろう。

★かつては宇多田ヒカルのミュージック・ビデオでその極彩色の幻想的な映像を見せつけた、フォトグラファー上がりのキリヤ監督。いざ映画のメガホンを取ると、ストーリーを語るのに一杯一杯だったのか、「学校へ行こう!」の青年の主張みたいな、練られてない生々しい想いをウワーッと叫びたてる作風だったのだが、本作ではさすがに手馴れたらしく、主張部分が抑えられ、「どうと言うこともない『忠臣蔵』風の創作劇」に落ち着いた。

★中世欧州ベースに多国籍の文化を混合したゴチャゴチャ世界のルック&フィールは、とても魅力的。CGによる極彩色の画は姿を消し、本作は実写・ロケにこだわり抜いた、重く暗い画面作り。白い雪の中に黒々とした騎士たちの姿がすごく重厚感のある印象。そんなイメージから大作に見えるけれど、イマイチ何も頭に残らない“雰囲気”作品となっている。

★鎧兜の騎士たちにはキレキレの見せ場となるアクションがある訳でもなく、熱い主従関係の描写にもそう時間は割かれておらず、また四十七士に対応する騎士たちを出し切ることもできないので人間関係はかなりオミットされ、結果的に西洋風なんちゃって時代劇としても『忠臣蔵』二次創作としても物足りない部分はある。

★主君バルトーク卿(モーガン・フリーマン)の娘が女衒に買われて娼婦としてライデン(クライヴ・オーウェン)の前に引き出される展開は、ちょっと興奮を誘った。そこまでやるのなら、いっそ叛意がないことを示すためにかつての主君の娘を娼婦として抱いて仕舞えば良かったのだが、それはやらないのがキリヤ監督のカワイイところだ。