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怪物はささやくの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

怪物はささやく(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

J・A・バヨナ監督作。

英国人作家:パトリック・ネスによる2011年発表の小説「A Monster Calls(怪物はささやく)」をスペインの俊英:フアン・アントニオ・バヨナが映画化した米西合作のダークファンタジーで、スペイン版アカデミー賞であるゴヤ賞で監督賞を含む9部門で受賞した秀作であります。

重い病を患う母親と暮らしている孤独な少年の前に、樹木の姿形をした怪物がある日を境に現れるようになり、怪物は少年に3つの物語を順に聴かせると言い、また4つ目の物語は少年自身の口から語るよう求めてきて―というファンタジー映画で、怪物との異種交流を通じて少年が受け入れ難い現実を受容していくまでの過程を映し出しています。

辛い現実に心を覆われた少年が空想上の怪物との交流によって現実に向き合う勇気を手に入れていく様子を、現実の苦痛から逃れたいと願う孤独な少年の繊細な葛藤&矛盾心理を軸に描き出していく“ジュブナイル+ダークファンタジー”であり、怪物が少年に語る物語を水彩調のCGアニメーションで表現しているのもユニークな一篇となっています。

また、本作は、翌年に制作された『バーバラと心の巨人』(17)との類似性を見つけることができます。本作では怪物は少年を見守り導く守護霊のような存在であるのに対し、『バーバラと心の巨人』では怪物=打倒すべき対象として描かれていますが、いずれの作品も空想上の怪物が少年少女に“現実の受容”をもたらす役割を果たしていることに変わりはありません。

主演のルイス・マクドゥーガルが小さな体で大きな現実に向き合う少年を繊細に演じていますし、母親役:フェリシティ・ジョーンズ&祖母役:シガーニー・ウィーヴァーの好演も光ります。また、強烈なビジュアルの怪物の声をリーアム・ニーソンが当てています。
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