JOY

怪物はささやくのJOYのネタバレレビュー・内容・結末

怪物はささやく(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ネットフリックスにて、字幕版

まずこの無駄も隙もない映像編集をした人間に拍手を送りたい。
デルトロの作品もそうだったけど、ダークファンタジーというジャンルのパワーは計り知れないな。
子供向けである「ファンタジー」というジャンルを、大人の鑑賞にも耐えうる作品にしている。

映画や小説、ストーリーを語る媒体自体に「心の機微」以上のものを感じれなかったけど、こういうものこそ映画でやっていくべきなのかもしれない。
大人な、地味だけど心の動きが派手な作品ばかりでなく、こういう良質なファンタジーも増えていってほしいし、何歳になっても見ていたい。


自分の知識の無さからくるものかもしれないけど、「母をなくす息子の辛さ」を、「悲しみ続けるのが辛い」という点から描いた作品が自分としては衝撃だったかもしれない。
過去にそういう作品を読んだり見たりした記憶はあるけど、当時一番鋭敏な感覚を持ってして描かれた作品なのではないだろうか。

怪物の語る一つずつの物語が主人公自体のメタファーになってる構成はとってもわかりやすく、感情移入がしやすいけど「作られたもの」としての映像作品、を感じさせてしまうのはデルトロと比べてしまうとマイナスポイント?なのかも。
自分のように大人と子供の中間をさまようような人間には一番響きやすいとは思う。

そういう意味では怪物の作りもCG丸出しで最初出てきたときは冷めてしまうところもあったけど、怪物の存在自体が主人公の妄想の中にだけ存在する、ということがわかる切り替えの瞬間が見事。
そこをちゃんとわかりやすくしてくれると、ハッキリしてて気持ち良いし、頭の悪い自分のような視聴者にも届きやすいと思う。

ここまで結構ディスってる?けど、本当に素晴らしい作品だった。
子役の演技力も圧倒的だったし、一番近くで母を見てきた「人間」であるはずの息子が母親から離されていく感覚も、子供時代の不自由さとあいまって誰もが共感でき、入り込める部分であるように思う。

「海街ダイアリー」でも言ってたけど、不幸を抱える子供は必要以上に大人になる、けどそれはアンバランスな大人っぽさで、子供であり、経験も知識も足りずにただ目の前のことをこなすことだけ大人になった存在にはどこかで契機が必要で、その瞬間はドラマになりやすい、からここを選んでる?のかな。

怪物はささやく、という邦題に拍手を送りたい、こういうことか、と。
スケアリーブックスの邦題なんか本当にアレだし、ちゃんとしてる所はちゃんとしてるんですよ。

主人公が少しずつ追い詰められていくけど、子供だからこそ最後に救ってくれる存在があらかじめ見えてて安心できるのかも。
大人が主人公ならそうはいかない、そのまま壊れてしまうこともあるから結局子供が主人公の映画は安心して観れちゃう。

デルトロ作品は大人向けファンタジーとして確立されていたし、あえて説明しない雰囲気から、個人個人が考えて補完できたけど、ちょっと難しいかなぁ、パンのツノが補修されているところとか誰がわかるんだよ。
でも年齢層に向けて考えてしまうと作品自体の毒が薄まるのでこれからも自分のやりたい作品だけをガンガン撮って欲しい。

そういう意味ではバヨナのこの作品は毒は薄い。
けどこれは本当に素晴らしい、子供に見せたい。

怪物役、リーアムニーソンなんですね。
三日くらいかけて危機の娘を救う男が怪物役まで、、、
この話も一週間経たないうちに進んでいくし、どんなアイデアも出るときは一瞬、悩む時間が一番長くて辛いけどまとまる時は秒だったりする。
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