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シグナルのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

シグナル(2014年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

MITに通うニックは、大学のパソコンにハッキングを仕掛けてきたハッカーの居場所を突き止めるため、友人のジョナスとガールフレンドのヘイリーとともにネバダを訪れる。しかし、そこで何者かに襲われて気絶した3人は、気が付くと政府の隔離施設に監禁されていた…。

若手注目株のブレントン・スウェイツにオリヴィア・クック、ベテラン俳優のローレンス・フィッシュバーンのキャストに惹かれて鑑賞。
全くの前情報無しで鑑賞したが、低予算にしてはなかなか良く出来ている。
謎のハッカーのシグナルを追いかけたら、異常な事態に巻き込まれた若者たちの顛末を描くSFスリラーの佳作だ。

気を失ったニックが目を覚ますと、見知らぬ施設で防護服を着た人間に囲まれていた。
デイモンという男から「君達はエイリアンと接触した」と告げられる。
ハッカーのシグナルは宇宙人からの誘いだったようだ。
ニックの下半身は一切動かなくなっており、ヘイリーは昏睡状態。
ジョナとは部屋の通風口を通して会話できたものの様子がおかしい。

未知のウイルスに感染したのだと防護服の人間が登場するのは、懐かしの「E.T.」を思い出す。
ニックをまるで宇宙人と疑うような質問やテストを行うデイモン。
一体、ニックらの身に何が起こったのか?というミステリーに序盤は惹かれる。

やがてニックは自分の両足が不思議な形になっていることに気付く。
幾何学形のギブスのような形だが、宇宙人の力で人間の身体が変態するのは「第9地区」を思い出す。
シリアスムードの中、ニックが自分の股間を確認するギャグには笑った。

悲嘆するニックだが、立って移動できるようになり、ヘイリーを連れて施設から脱出に成功。
車で通り掛かった老婆の助けで、ガソリンスタンドに辿り着いた2人は、成り行きでトラックを盗むも、断層で道路が断たれていた。

2人を追うデイモンは、老婆やトラックのドライバーにニックたちの行方を質問するが、おかしな返答を繰り返す彼らを射殺。
まるで壊れたロボットにトドメを刺すようで、デイモンは罪悪感すら現さず冷静。
周辺一帯全てが何かおかしいと謎が広がる。

ニックらは辿り着いた資料館のジオラマで周辺の地理を確認するが、道中で見た光景とジオラマは明らかに違う。
そこに防護服を着て脱走したジョナが合流。
ジョナは彼らに付けられた数字から周辺一帯が「エリア51」で巨大実験場だと主張。
ジョナの両腕はニックと同様に変形していた。
ニックとジョナは宇宙人のモルモットにされたらしい。

一行は道路の端を目指すが、そこにはデイモンと武装部隊が待ち構えていた。
ニックはデイモンの防護服に貼られた名前のシール(DAMON)を見て、彼こそがノーマッド(NOMAD)であると気付く。
「ん?デイモンが宇宙人の手先で、ニックたちをそこに呼び寄せたのか?」と思ったが、ラストにヒネリがあった。

ジョナは抵抗するも射殺され、ヘイリーは連れ去られる。
感情が昂ったニックに呼応するように変形した足が力を発動。
ニックが凄まじい速度で走り抜けると、途中でガラスにぶつかり突き破ってしまう。

困惑するニックに、橋を渡ってきたデイモンが追いつき、防護服を脱ぐと自分の体が機械であることを明かす。
デイモンは宇宙人の手先どころか、ロボットだった。

さらに逃げようとしたニックが、そこが宇宙空間に造られた巨大建造物であることを知り、茫然自失となる姿で映画は終わる。

謎だらけのミステリーな序盤、監禁施設からの脱出劇となる中盤、逃走劇の終盤と脚本の構成はしっかりしている。

逆読みのハンドル・ネームやボールペンを例にした人類文明の講釈、足が不自由になる前に健脚だった頃のニックのジョギング姿など、冒頭からしっかり伏線が張ってあり、終盤はそれを回収するように畳み掛けるサプライズがある。

肝心の宇宙人は出てこないし、なぜ宇宙人がMITの秀才であるニックたちを選び、頭脳ではなく肉体をモルモットとしたのか?
など不満な点はいくつかあるが、人智を超えた存在に詳しく説明を求めるというのも野暮な話だ。

シグナルを辿ることができた優秀な人間にだけ、宇宙人は歩み寄ってくる。
低予算ではあるが、別角度の「未知との遭遇」として面白い。
もしかしたら宇宙人は人類にさらなる進化を与えたかったのかもしれないと考えると、脱出できないからといってバッドエンドとも言い切れない。

考察を残すところがSFとして面白いと思える作品である。
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