りゅっくサック

ワンダーウーマンのりゅっくサックのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン(2017年製作の映画)
4.3
DCEUナンバーワンでーす!あんたはやる子だと思ってたよあたしゃ!

MARVELのブラックパンサー(2018)と同じ、集結映画で自己紹介を済ませた後単独作を描く“2の形式を取った1”
ヒーロー誕生物語や強制的な次回作への繋がりに飽き気味な今はこっちの方が見やすい。
その手法を取るDCEUにはゴタゴタも多いけど頑張ってほしい。

女性だけの超人アマゾン族がひっそりと暮らす、太平洋のどこかにある島セミッシラ。
そこに第一次大戦中のドイツ軍に追われるトレバー大尉が墜落するシーンから物語は始まる。

冒頭アマゾン女戦士たちのアクションでまず引き込まれる。
動きのアクロバットさとカットの爽快さで、訓練された精鋭部族だと感じさせる。
特にアンティオペ将軍が弓を使う戦闘は短いものの、ジョン・ウィックを彷彿とさせるガンフーならぬ弓フーが美しい。

ダイアナは“初めての男”トレバー大尉と交流する中で外界の現実を知り、彼の使命に触発される。
ここで“下ネタと勘違いする男とそんな気無い女あるある”風な下ネタが2度あるんだけどまぁ長い。
海外流のジョークに乗れなかっただけかもしれませんが…

そして田舎娘ダイアナの上京物語が始まるんですね。
女性参政権もなかった第一次大戦下の時代。
ダイアナには女性が虐げられてるのが不思議で仕方ない。
「どうして会議室に女は入っちゃいけないの?」
「どうして女はコルセットとペチコートなんか着なきゃいけないの?」
ダイアナの素朴な疑問につい閉口してしまう。
女性は立ち上がってこうするべき!ではなく淡々と追求する描写が良いと思った。

その後大量殺戮兵器を開発したドイツ軍との戦いに身を投じていくのだけど、危険を顧みず最前線で兵を導く様子がまさに聖女ジャンヌ・ダルク。

その後に続く小隊メンバーの
アラブ系であるが故に俳優の道を断念し兵役に就いたサミーア。
PTSDを患う狙撃手チャーリー。
ネイティブ・アメリカンで兵士達に物資を密輸している酋長。
を絡めて反戦と反差別を言外でほのめかしていたのが好印象。

それからトレバー大尉との関係の行方、未熟なダイアナは人間社会をどう捉えるのか、そして意外な秘密とは、、、

ダイアナ×トレバーの恋愛模様は多少不自然に感じました。
クリス・パインはカッコいいけど、生真面目なラピ○タのペー○ーみたいで惚れる理由が弱い気がする。
これは恋に落ちるわ!という印象的なシーンも無くくっついちゃう。
古典的な世間知らずのお姫様が城下町の不良イケメンに恋する感じで素敵♪とはならなかった。

監督がキャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011)的なプラトニックに気恥ずかしさがあったのかな、とも思う。
もっと俗世間の事を学んでいく様子や、トレバー大尉の特別さとクリパのイケメンポイントが見たかった。

ダイアナのその後を考えるとキャプテンよりも辛い時間を過ごしたんじゃないかなぁ。
ダイアナの恋模様も次回作ワンダーウーマン1984で1番楽しみなところ。

幼少期のダイアナを演じたリリー・アスペルちゃんが、ガルガド姉さんに負けず劣らず可愛すぎる…
女王にお転婆が見つかった時の
「こんにちは母上、ご機嫌いかが?」
とすっとぼけるシーンにキューーン❤︎ですよ!
調べると実は劇中リリーちゃんの乗馬シーンはスタントなしの本物。
元騎手の両親を持つ競馬一家の生まれで
リリーちゃん自身も障害馬術で何度も優勝している実力者なんですね。

また上手いのが後に繋がるシーン作り。
その伏線もこれ見よがしでもないちょっと目に付く自然な塩梅。
例えば冒頭浜辺の戦いでアンティオペが物陰の兵士を倒す戦法を見ていたトレバー大尉→ベルギーの戦いで塔の狙撃手を倒す為に…
と戦場が動いてる感覚とそれをしれっとやってのけるスマートさに驚いた。

ただその後に繋がるシーン作りが上手い割には、伏線や情景までサラッと見せちゃうあっさり感が気になった。
晩餐会潜入直前の椅子なんか1~2秒の写すだけでえ?え?みたいになるし、その答え合せも城外からの映像でよく分からない。
クライマックス直後の兵士と小隊メンバーもカメラが引きすぎて誰が誰だか分からなかったり。

スピーディなアクションを意識しすぎて
ジャンプ!→スロ〜…→ドカ!→バキ!→スロ〜…→バゴォーン!
みたいなリズム感が逆に単調に感じた。
シリーズ次作ジャスティス・リーグ(2017)では緩急が良かっただけに、まぁここは演出センスの違いですかね。

これはDCEU特有ですが
格闘ゲームみたいな不自然なCG野っ原で合成バトルドッカンドッカンからそろそろ脱却してほしいなぁ…とか(;^ω^)

とはいえ全体のバランスは絶妙で3日間毎晩見てしまうほど、見やすい一本筋からブレないストーリー。
siaのテーマソング“To Be Human”も「人間であるということは愛するということ」とぴったり作品とマッチ。
最後の最後までよく考えられてるなぁ、とアメコミ映画全体でも上位に来る作品でした。
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