このレビューはネタバレを含みます
世界初の性別適合手術を受けたアイナー/リリー・エルベとその妻ゲルダの物語。
アイナーがリリーという存在を自分の中に認識してからリリーへと移り変わっていくその過程が、エディ・レッドメインの演技力によって更に細く描写されていて凄かった。
全体の雰囲気、音楽、映像美、心情描写、全てが相まって観客側を世界観に引き込む作品。
トランスジェンダーが精神疾患と診断されてしまう時代の中で、この手術を決断したリリーの勇気ある行動に感銘を受けた。放射線治療の際、「リリーが傷ついた」と涙する彼女を見て、彼女の立場に立ってみてもどれだけ苦しかったかは計り知れないものではあるが、作品とリリーの表情から伝わってくる苦悩に心が痛んだ。
1人の人間としてアイナー/リリーを愛したゲルダの深い愛にも感動した。愛する人が自分が知っていた姿とは違くなっていくことを受け入れ、支えることの難しさを作中の彼女の心情の揺れから理解することができた。
もしあのとき自分がモデルの代役を頼まなければ、と後悔する様子を見せたゲルダに対し、リリーが「君が姿を与えたけどリリーはずっといた」と言った場面がとても印象的だった。
原作はリリー・エルベの人生をフィクション化した小説とのことなので、綺麗に脚色されている部分もあると思うが、とても良い作品だった。