tomo

リリーのすべてのtomoのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

実話を元にした話だそうだが、ある程度の脚色・物語化はされている模様。
LGBTQを題材にした作品では周囲の無理解に対する苦しみが描かれるのが定番だが、本作では妻のゲルダを筆頭に周囲の理解が凄い。もちろん主人公のアイナー/リリーの苦悩も丁寧に描かれているが、無償の愛とサポートをくれる妻に対し主人公は「自分のことばかり」「それほどの愛に値しない」といった表現(後者は主人公自身の自省的な台詞だが)を使うところに、盲目的に主人公を肯定せず周囲の優しさを重視する製作者の誠実さを感じる。幼馴染のハンスも袖にされた形になったヘンリクもみんな優しい。
ゲルダについては、史実をWikiレベルで齧った限りでは、そのあまりにもサポーティブな姿勢や本人の画風などから、アイナーへの大きな献身の理由は彼への愛だけではないのでは、と想像されている節もあるようだが、本作ではあくまで「夫」への愛のみが描かれている。もう少し踏み込んだ方が説得力が増す気もするが、比較的最近の史実を元にした作品ということで想像に基づく解釈への遠慮があったのかな。
犬がとても好きなので、夫婦の飼い犬がとても可愛くて出てくるたびにニヤニヤし、2人が別々の道を選んだらこの子どうなるんだろう…とハラハラした。結果的に主人公の死という結末になったためワンちゃんどうすんのさ問題は表面化しなかったが、ペットを飼うときは家族構成が変わったらどうするかまで考えて飼わにゃならんという気持ちを新たにしました。
tomo

tomo