さあこ

リリーのすべてのさあこのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.3
「あなたは正しい。」

その一言に彼がどれだけ救われたか。その一言に彼女がどれだけ救われたか。
その一言だけで、彼女たちがどれだけ救われたか。

今回最も胸を掴まれ、思わず涙が溢れそうになったシーン。
無条件に否定され続けた2人が、初めて無条件に許しを得る。

自分の中に女を見つけ、愛する妻を苦しめる自分に苦悩するアイナー。
それでも本当の自分になりたいと苦しみ、あるべき姿を強く望むリリー。
強く美しくどこまでも愛が深いゆえに、最愛の夫に妻として愛されないゲルダ。

3人でひとつの物語。
共感は正直ない。だからこそ涙は出ない。御涙頂戴の話ではない。

人生最大の愛の物語。ただしそれは慈悲深い愛情では、決してない。ゲルダはすべてを受け入れたわけでもないと思う。
心から愛する人(アイナー)を愛する人(リリー)自身から否定されることの残酷さ。受け入れるわけがない、それでも受け入れようともがくゲルダの姿が美しい。
そしてそこにあるのは、1人の人間のエゴだ。1人1人それぞれのエゴ。

受け入れられない、愛されない、戻ってほしい、愛したい。
だからこそ、それでも、あなたに幸せであってほしい。

オープニングから寂しく美しい景色が胸をつく。それは最後にさらなる眩さと美しさを持って心に広がる。

「あなたのことを断れると思ってる?」(ニュアンスです)ゲルダがアイナーへ問うシーンで見せる彼の子どものような笑顔が、「庭に連れて行ってほしい」というリリーの笑顔と全く変わらず、ああゲルダはもう止めることは出来ないんだろうと表情から思い知る。

エディ・レッドメインの演技が素晴らしい。アリシア・ヴィキャンデルの力強さが眩しい。
個人的にはマティアスがタイプすぎてめろめろどっきゅん!(今までの感想が台無し)

DVDになったらもう一度じっくり見たいと思います。