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リリーのすべてのShinMakitaのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.7

1920年代末のコペンハーゲン。そこそこ名の売れた風景画家アイナーと、いまいち売れない肖像画家のゲルダは仲睦まじく暮らす若夫婦だった。ある時、ゲルダの絵のモデルを手伝うため女装したアイナーは、幼少の頃から抑え込んできた衝動が疼き始めたことに気づく。彼は性同一障害で、女性になりたいという願望を抱いていたのだ。その後、芸術家たちが集うパーティに完璧な女装をして「リリー」と名乗り参加してみたことで、ますますその願望は肥大化していく。夫の女装は単なる洒落だと思い、ふざけてリリーの肖像画を描いてみたら売れてしまって喜ぶゲルダだったが、アイナーが本気であることを知り困惑する…



「リリーのすべて」。デンマークの女、という原題よりも解りやすい、いい邦題ですね。

結論を先に言いますが、これ、かなり良い映画です。俺みたいな、同性愛やトランスジェンダーに偏見がある輩をも感動させる力を持った作品です。

映画の中で若い男性が若い女性を演じるシーンってのは、笑わせるモノがほとんどです。出落ちですよね。基本、女装は画面で長く保たないんですよ。まぁ「クライングゲーム」みたいな反則もありますけど…ところが、このリリーにはそんなセオリーは当てはまりません。何故なら、マジで美しいからです。特に最初のオペを終えて社会に出たリリーの可愛らしさといったら!これはエディ・レッドメインの演技の凄さですよね。視線・仕草・表情の雄弁さは、誰にも出せない技ですよね。
もちろんそれだけでなく、妻ゲルダの葛藤もきっちり描いているのが良いですね。本物の女である彼女のほうが、雑に服を散らかしていたりして、女らしいリリーと対比させてるのも上手いです。この映画を「闘病もの」と言ってしまうと語弊があるけど、それに似た感動があるのは事実。闘病ものは、患者だけじゃなく、患者家族の苦しみと成長が描かれているかどうかがキモですが、本作はこの当たりがしっかりしているんですよ。

オチのスカーフ、耳に残るテーマ曲の旋律、などなど色々加点していくと、評価は高くなっていきますね。観る価値大アリな作品です。オススメ!
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